【はじめての Vertex AI 入門ガイド:何ができる?セキュリティは?やさしく解説】

[updated: 2025-10-29]

はじめに

今回は、Google Cloud™ が提供する AI プラットフォーム「Vertex AI™(バーテックス エーアイ)」について、専門知識がなくても理解できるように、できるだけやさしい言葉で解説していきます。
AIを使った開発や業務活用に興味はあるけれど、「難しそう」「何から始めればいいか分からない」という方に向けて、実際の仕事で役立つ視点や注意点も交えてご紹介します。

Vertex AIってなに?

学習→テスト→デプロイ→監視まで ぜんぶ一つの基盤で行う「Vertex AI」の図
企業向けの「AI開発・運用の工作室」みたいなものです。
Vertex AI は、AIを使った仕組み(たとえばチャットボットや予測モデル)を作るところから、テスト、実際の業務への導入、その後の改善・管理までを一貫してサポートしてくれるクラウドサービスです。
普通なら、AIを活用するにはいくつものツールやサービスを組み合わせて使う必要がありますが、Vertex AIを使えば、「ぜんぶここで完結できる」というのが大きな特徴です。
▶ Google 公式の定義では、「AIの学習と利用をまとめて行える統合プラットフォーム」と説明されています。

今知っておきたい Vertex AI のポイント(2025年版)

① 最新のAIモデル「Gemini 2.5 Pro」が登場(2025年6月17日 GA)

  • より高性能な会話や推論が可能になり、日本国内(東京リージョン:asia-northeast1)でも利用可能になりました。

② 200種類以上のAIモデルが使える「Model Garden」(※2025年10月現在)

  • Google公式だけでなく、他のAI企業やオープンソースのモデルもまとめて選べます。

③ AIエージェントを作れる「Agent Builder / Engine」

  • 自動応答や社内情報検索など、人の代わりに働くAIを自分で組み立てて使えます。

④ 情報管理やセキュリティにも強い

  • 企業向けの機能として、**日本国内でのデータ処理(データレジデンシ)や暗号化の設定(CMEK)**なども対応。

Vertex AI でできること(ざっくりマップ)

カテゴリ概要
✨ 生成AIGeminiやClaudeなどの会話AIを使える。 UIで試す→コードで実装。
📊 従来型ML表データや画像などを使ってAIを自動で学習。 AutoMLや手動学習も対応。
🔎 検索連携(RAG)社内文書からAIが答える仕組み。 根拠付き回答ができる。
🔧 MLOpsAIモデルの管理・評価・監視などを一元化できる。
※RAG機能のセキュリティ対応は機能ごとに異なります。たとえば Vertex AI RAG Engine は VPC-SC や CMEK に対応していますが、Data Residency(地域内処理)は対象外です。Vertex AI Search の一部 RAG API(grounded generation やランキング)も CMEK 非対応です。用途に応じて確認が必要です。
 
▼Vertex AI 導入をご検討の方は、こちらのサービスがオススメです。

どうして Vertex AI が選ばれるの?

  • 安心のセキュリティ設計
    • 日本国内でのデータ処理や、お客様自身の暗号鍵を使う設定など、企業にとって安心できる仕組みが用意されています。
  • 使いやすいSDK(開発ツール)
    • 「Google Gen AI SDK」 を使えば、Vertex AI と Developer API のどちらにも、同じコードでアクセスできます。
  • たくさんのモデルから選べる
    • AIのモデルは目的に応じて選ぶのが大事。Googleだけでなく、他社やOSSのモデルも一覧で探せます。

実務でのはじめ方(コンソール画面で操作する方法)

  1. Google Cloud のプロジェクトを作成し、料金設定を有効にする
  1. Vertex AI API をONにし、必要な権限(例:)を付ける
  1. 「Vertex AI Studio」でGeminiなどのAIを試してみる
  1. 「Model Garden」で必要なモデルを探して使えるようにする
  1. 本番導入時は、東京リージョンやセキュリティ要件をしっかり合わせる

Pythonでの使い方(コードで試す方法)

以下のようなPythonコードで、Vertex AIのモデルを呼び出して使うことができます:
💡 この方法なら、Vertex AI と Developer API の両方を同じコードで切り替えて使えます。
※実行前に認証設定(ADCやAPIキー)をしておく必要があります。

よくある使い方とそのポイント

ユースケース使う機能注意点
社内Q&ARAG Engineセキュリティ設定(CMEK対応か)を事前に確認
ナレッジワーカー向けAgent Builder複数エージェントや外部連携が可能
データ分析や予測AutoML Tabular前処理〜評価まで自動化。 再現性あり
高度なAI学習Custom Training自由度が高く、プロ仕様

セキュリティに関する大事な話

  • データの置き場所を選べる
    • たとえば「東京リージョン内だけで処理」など、どこでデータを扱うかを決められます。社内ルールや法規制に合わせやすくなります。
  • 外に漏れにくい仕組みがある
    • 社内ネットワークで閉じる(VPC)
      • インターネットから直接触れない専用ネットワークの囲いを作り、外部からのアクセス経路を減らします。
    • 自社の鍵で暗号化(CMEK)
      • 保存中のデータを自分たちが管理する鍵で暗号化。鍵のローテーションや失効も自社ポリシーで運用できます。
  • 権限は必要最小限にできる
    • アカウントごとに「見るだけ」「実行は不可」など細かく設定(IAM)でき、誤操作や内部不正のリスクを下げられます
 

料金とコストの考え方

Vertex AIは「使った分だけ費用が発生する従量課金型」のサービスです。費用はモデルの種類・使い方・利用量によって大きく変わります。
視点概要
① モデル選定高性能モデルほど高額 (例:Gemini 2.5 Pro
② 利用量 (トークン)入力・出力のトークン(文字)量が多いほど高くなる
③ 処理方法自動学習や独自学習はマシン使用料が発生(AutoML等)
 

かんたんシミュレーション(Gemini 2.5 Pro)

「Vertex AIって、結局いくらかかるの?」
そんな方のために、よくある利用例ごとに料金の目安をご紹介します。
このシミュレーションでは:
  • 1ドル=150円(レートは目安)
  • 1文字=だいたい0.25〜1トークン
  • モデルは Gemini 2.5 Pro(高性能モデル)
    • を使ったときの料金をざっくりと試算しています。
※実際の料金は、使うモデルの種類・文字数・使い方(キャッシュの有無など)で変わります
正確な料金は公式ページをご確認ください:
 
よくある利用例とその料金目安
利用シーンどんな使い方?月額の目安(概算)
社内向けチャットボット月100回 × 1000文字くらい約 ¥40〜170 /月
社外からの問い合わせ自動応答月1000回 × 1500文字くらい約 ¥630〜2,530 /月
週1回の資料要約月4回 × 1万文字をAIで要約約 ¥20〜70 /月
AIモデルの学習(AutoML)1〜2ノードで3時間の学習約 ¥1,500〜3,100(1回あたり)
💡 入出力の合計トークン数によって価格が変わります。
出力トークン(AIが返す文の長さ)の方が単価が高い点もポイントです。
 
トークン単価(参考)
  • 入力:$1.25/100万トークン
  • 出力:$10.00/100万トークン(Gemini 2.5 Pro)
たとえば「1000文字のやりとり」を月100回すると、
おおよそ「10万〜40万トークン」くらい使うイメージです。
 

AutoMLの学習費用って?

自分のデータを使ってAIモデルを学習させる場合(AutoML)は、
マシンのスペック × 学習時間 × ノード数(並列数) で料金が決まります。
  • 例:1ノードあたり $3.465 / 時間
  • 学習時間:3時間 × 1ノード = 約 ¥1,560
👉 使うデータの量や精度の要件によっても変わります。
 

コストを抑えるためのポイント

工夫できるところ具体的な方法効果
軽量モデルを選ぶGemini 2.5 FlashやFlash-Liteはかなり割安月数百円から検証可能
プロンプトを最適化無駄な言葉や重複を減らし、返答も短くする出力トークン削減 → 安くなる
キャッシュを使う同じやりとりは「暗黙キャッシュ」で再利用最大90%ディスカウント
安定版モデルに固定モデルのアップデートによる想定外の再試行を防ぐ料金ブレを防止できる
 

補足:キャッシュとは?

AIのやりとりを一部記憶して再利用する仕組みです。
「似た質問・同じ内容」にはキャッシュが効いて料金が安くなる可能性があります。
キャッシュの種類特徴料金
暗黙キャッシュ自動的に使われる最大90%オフ
明示キャッシュ自分で設定して保存保存料あり(例:$4.5/100万Tok-時)
補足:一部のAPI(Batch API)はまとめて処理することで割安に。
Gemini + Google検索やMaps連携(Grounding)は、無料枠が設定されている機能もあります。
 

よくある質問と対策

よくある質問回答のポイント
どのSDKを使えば?「Google Gen AI SDK」ならどちらのAPIでもOK
東京リージョンで使える?Gemini 2.5 Pro は に対応
エラーになる?権限不足・リージョン間違いが多い。まず確認

まとめ

トピック要点公式ドキュメント
Vertex AI の位置づけ生成AI+従来ML+MLOpsの統合基盤(Google Cloud Documentation)
最新モデルGemini 2.5 Pro (2025-06-17 GA、東京対応)(Google Cloud)
モデル選定Model GardenでGoogle/パートナー/OSSを一元管理 (SFT可否はモデル依存/2.5 ProもSFT対応(Google Cloud)
使い方の最短経路Studioで試す→Gen AI SDKで実装(Google Cloud)
セキュリティデータレジデンシ、VPC-SC、CMEKの対応表を確認 (RAG APIの一部は Data Residency/CMEK 非対応(Google Cloud)
RAG/エージェントRAG Engine、Agent Builder / Agent Engine を用途別に(Google Cloud Documentation)
従来MLAutoML と Custom Training、Pipelinesで再現性(Google Cloud Documentation)
料金Generative AI と Vertex AI の料金ページを併読(Google Cloud Documentation)
権限 付与が出発点(Google Cloud)

公式リンク集

用語解説公式
Vertex AIGoogle Cloud の統合AIプラットフォーム(Google Cloud)
Gemini 2.5 Proマルチモーダル生成AIの最上位系(Google Cloud Documentation)
Model Gardenモデルの発見・評価・導入の場(Google Cloud Documentation)
Vertex AI Studioプロンプト実験のUI(console.cloud.google.com)
AutoML Tabular表形式データの自動モデリング(Google Cloud Documentation)
Vertex AI PipelinesMLパイプラインのオーケストレーション(Google Cloud)
Vertex AI Agent Builder/Engine企業向けAIエージェントの構築・運用(Google Cloud)
データレジデンシ地域内処理に関するポリシー(Google Cloud)
VPC Service Controlsデータ持ち出し境界の構成(Google Cloud)
CMEK顧客管理鍵による暗号化(Google Cloud)

おわりに

Vertex AI は、AIを業務に取り入れたい企業にとって、非常に強力で柔軟なプラットフォームです。最初はとっつきにくく感じるかもしれませんが、小さなプロジェクトから始めて、少しずつ慣れていくのがおすすめです。 Elcamyでは、要件整理からPoC、開発実装・評価まで伴走するVertex AI 導入支援を提供しています。実務導入を検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。

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