【速報・要約】Agentic AI Summit '26 Spring 基調講演まとめ|「生成から実行へ」Google Cloudが描くAIエージェント時代の企業変革

はじめに 2026年3月19日開催イベントを速報要約

2026年3月19日、品川区のTAKANAWA GATEWAY Convention Centerで「Agentic AI Summit '26 Spring」が開催された。Google Cloud Japan主催のこのイベントには会場1,000名超+オンライン参加者が集まり、基調講演では日立製作所・KDDI・サイバーエージェントの担当者が登壇した。
本記事は、公開された基調講演(10:00〜11:30)の内容を当社の視点で要約・整理したものです。正確な発言内容は一次情報をご確認ください。

3行サマリー

  • AIは「個別タスクの効率化」から「複数エージェントが自律連携して業務を実行する」フェーズへ移行。これが本基調講演の核心メッセージだった
  • 日立製作所・KDDI・サイバーエージェントの3社が異なるアプローチで実践事例を提示し、共通して「まず始めること」の重要性を示した
  • エージェントは一度作って終わりではなく、モデル進化・フィードバック・データ基盤への継続投資が不可欠という構図が明確になった
 

目次

論点①:AIは「生成」から「実行」へ ——何が変わるのか

基調講演冒頭でGoogle Cloud Japanの代表が強調したのは、AIの役割の質的変化だった。
これまでのAIは議事録作成や壁打ちといった「個別タスクの置き換え」が中心だった。これからは、複雑な業務プロセス全体を複数のエージェントが連携して自律的に処理する時代に入るという。
発表内容の要旨として当社が理解した範囲では、Gemini Enterpriseはその入口として位置づけられており、企業内に散在するデータを収集・文脈化してタスクを実際に実行する「総司令塔」の役割を担うとされていた。比喩として「過去のすべてを知っている大ベテランのスーパー社員」という表現が使われていた点が印象的だった。
当社の解釈:「生成AIを使う」段階から「エージェントに業務を任せる」段階へ。この変化はシステム設計・データ管理・ガバナンス体制の全面的な見直しを意味する。PoC(概念検証)を超えて本番運用に移行するための設計思想の転換が、今まさに求められている。

論点②:3社の実践事例から見えた 「温度差」と「本質」

日立製作所:トップダウン導入の現実を正直に語った

日立製作所のCIOによる発表内容の要旨として(当社の理解):
  • OT領域での成果: 鉄道保守において走行データ・天候・摩耗条件を組み合わせた最適化を実施。保守コストを最大15%削減したという数字が示された
  • オフィスワーカー領域: 企画系部署での利用率が先行して伸びており、調査・クリエイティブ業務での活用が中心
  • 課題の正直な開示: 2026年1月のトップダウン展開開始後、全社的な利用率は期待を下回った。IT部門と業務部門を融合した専任組織を新設して対応中
  • 次のフェーズ: グループ内4万人規模へのエージェント共有展開を目標とする
この発表で注目すべきは「うまくいっていない部分」を公開したことだ。トップダウン号令だけでは業務は変わらない——この現実は多くの企業に当てはまる普遍的な課題だと当社は受け取った。

KDDI:非エンジニアが社内ハッカソンで優勝

KDDIの執行役員による発表内容の要旨として(当社の理解):
  • 社内で開催した「KDDI AI Agent Day with Google」では64組・500名超が参加
  • 非エンジニアの広報チームが作ったAI分析エージェントが優勝し、実際に社内システムとして採用された
  • 2C領域:コンテンツプロバイダーとの連携によるパーソナルAIサービスを開発中(2026年4〜5月発表予定)
  • 2B領域:大阪のシャープ工場跡地をデータセンターに転用し、Google Distributed Cloud(GDC)を稼働。クラウド全面依存への地政学的リスクへの対応として「手の内化」の重要性を強調
当社の解釈:「AIエージェントを作るのはエンジニアの仕事」という前提が崩れた事例だ。業務担当者が自分たちの課題をエージェントで解決できる時代が、すでに現実になっている。

サイバーエージェント:数年の積み重ねが生んだ5.6倍の生産性

サイバーエージェントの発表内容の要旨として(当社の理解):
  • 2016年からAIラボを設置し研究開発を継続。博士号を持つ研究者が所属し、GPU環境も自社保有
  • 自社開発のAI生成プラットフォーム「アイスクリーム」を通じ、Imagen・Veoなど複数モデルを活用
  • クリエイティブBPO事業での実績:累計120万点の生成、制作効率30%圧縮
  • 2020年から社内でAIドリブンな制作プロセスへの変革を推進し、生産性5.6倍を達成
当社の解釈:5.6倍は一夜にして生まれた数字ではない。6年間の積み重ねの結果だ。「完璧な設計から始める」より「今すぐ小さく始めてフィードバックを回す」ことの優位性を、この事例は数字で証明している。

論点③:競争軸が「機能」から「体験」へ ——CXの構造変化

発表の中で特に印象的だった数字がある(当社の理解として)。
  • ユーザーの約82%は、1回の悪い体験でそのサービスを使わなくなる
  • 約70%は、体験の悪いブランドから他社へ乗り換える
これはEC・リテールだけの話ではなく、あらゆる業種・業態に当てはまるという趣旨だった。
フォームへの手入力、全角・半角エラー、途中で止まる申し込みフロー——AIエージェントによるスムーズな体験に慣れたユーザーにとって、こうした「昔の当たり前」は失望の原因になる。競争の軸が「同じ機能をいくらで提供するか」から「どんな体験を提供するか」へシフトしているという見方は、当社も共感するところが大きい。
Google CloudはGemini Enterprise for Customer Experienceという新サービスを発表した。ECサイトでのデモとして、実在商品を使った体験型の購買提案をエージェントが実現する様子が紹介された(詳細は公式サイト参照)。

論点④:エージェントは「作って終わり」ではない ——継続投資の3要素

発表の要旨として整理された3ポイント(当社の理解):
#要素内容の要旨
1モデルの進化への追随AIエージェントの根幹となるモデルは継続的に進化する。 Vertex AIで200以上のモデルを提供し、最新版に随時切り替えられる体制が重要
2フィードバックによる継続改善ユーザーニーズは変化し続ける。 LLMによる自動評価とフィードバックループを仕組みとして組み込む必要がある
3エージェント時代のデータ基盤会話・音声・画像といった非構造化データと、従来の構造化データを統合処理できる基盤が必要。 BigQueryでの対応が示された
当社の解釈: 多くのAI導入プロジェクトがPoCで止まる理由の一つは、「作ったら完成」という設計思想にある。評価指標・フィードバックループ・データ基盤を最初から組み込んだ設計をしなければ、エージェントは劣化していく一方だ。

論点⑤:Google Anti Gravity ——開発サイクルの「無重力化」

基調講演の締めに紹介されたのが、Google Anti Gravityだ。エンジニア向けのAI統合開発環境(IDE)で、設計→コーディング→テスト→デプロイというソフトウェア開発の全工程を、複数のAIエージェントが協調してカバーする。
デモとして示された内容(当社の視聴時点の理解)では、既存の体験予約サイトへのAIチャット機能追加を約10分で完結。ブラウザを自動操作してテストを行い、UIの問題を検出して修正し、Cloud Runへのデプロイまでをほぼ手放しで実現した。
現時点では無料の個人版が利用可能。エンタープライズ版は「Coming Soon(近日公開予定)」とされていた。

用語整理 今回の基調講演で頻出したキーワード

用語当社の理解による解説
Agentic AI(エージェンティックAI)単一タスクを処理するだけでなく、目標に向かって自律的に計画・判断・実行を繰り返すAIの総称
マルチエージェント複数の専門AIエージェントが連携・協調して複雑な業務を分担処理する仕組み
Gemini EnterpriseGoogle Cloudが提供するビジネス向けAIプラットフォーム。社内データ連携・エージェント開発・共有機能を持つ
Google Distributed Cloud(GDC)Google Cloudの技術をオンプレミス環境や閉域網で利用できる仕組み。主権(ソブリンティ)やデータローカライゼーション対応に活用
Google Anti GravityAIエージェント活用を前提に設計されたIDE。ソフトウェアの設計〜デプロイをAIがオーケストレーション
A2AプロトコルAgent-to-Agentの略。異なるAIエージェント間の通信規約。マルチエージェント設計の基盤となる

実務への示唆:当社elcamyの視点

1. 「利用率の低迷」を正直に語った日立事例が示すこと

トップダウン展開しても現場に浸透しない——これは多くの企業が直面する現実だ。 「ツールを入れること」と「業務を変えること」は別物。導入後の定着支援・ユースケース発掘・IT部門と業務部門の協働体制なしに「AI業務変革」は実現しない。
当社が支援する企業でも、同様の課題が繰り返し登場する。導入の前に「誰がどの業務でどう使うか」を設計することが、成否を分ける最初の一手だ。

2. 非エンジニアがエージェントを作れる時代の設計論

KDDIの事例は象徴的だ。Gemini Enterprise上のAgent Designerをはじめ、ノーコード・ローコードでエージェントを構築できる環境が整いつつある。
「AIは開発者が作るもの」という前提を手放し、業務担当者が主体的にエージェントを設計・改善するサイクルを組織に埋め込むことが、今後の競争優位の源泉になると当社は見ている。

3. 小さく始め、フィードバックを回すことが最速の道

サイバーエージェントの5.6倍という数字は、6年間の積み重ねから生まれた。最初から完璧なアーキテクチャを設計しようとするより、動くものを作り、使い、改善するサイクルを回す方が長期的には圧倒的に速い。
当社がDify活用支援を通じてお客様に一貫してお伝えしていることも、この考え方に基づいている。まず一つのユースケースでエージェントを動かし、フィードバックを積み上げる基盤設計こそが、Agentic AI時代の最初の一歩だ。
 

まとめ

Agentic AI Summit '26 Spring の基調講演を通じて浮かび上がったのは、AIエージェントの時代が「議論」から「実践」に移行しているという事実だ。
3社の事例はそれぞれ異なるが、共通して「始めた企業だけが学べる」という構造を示している。始めなければフィードバックは得られず、フィードバックなしにエージェントは育たない。
まず一つの業務課題からエージェントを作り、評価し、改善する——その積み重ねが競争優位につながる。

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出典・参考リンク

免責事項: 本記事は2026年3月19日に公開された基調講演の内容を当社で要約・整理したものです。登壇者の発言の正確な表現や詳細については、一次情報(公式イベントページ・録画・公式ブログ等)をご確認ください。