【麻雀×AIの可能性】伝統的なゲームに革新をもたらす技術

[updated: 2024-07-30]
 
皆さん、こんにちは。株式会社Elcamyのデータサイエンティスト兼AIエンジニアの近江俊樹です。
今回は、僕が最近特に注目しているAI技術麻雀という組み合わせについて、書いていきたいと思います。
というのも僕の趣味はロケットリーグ(車でサッカーをするe-sports)、麻雀だからです。
まずロケットリーグについては正確な時期は忘れましたがSeason12あたりでGCを取らせていただいてから、数年間ほとんどプレイできていません。
ちなみにGCというのは以下のランクの分布(正規分布になってますね、若干右裾が長いか?)の一番右端のGrand Champion、つまりGCのことです。また時間が作れたらプレイしたいです。
(引用:@EclaiL_RLさんのXの投稿
 
そんな中、今でもひっそりと続けているゲームが麻雀です。
プラットフォームは主に雀魂でプレイしています。こちらもランクの分布を見てみましょう。
こちらは良い分布図がなかったので「まっきぃさんという方の雀魂プレイヤーの段位分布考察(2024.4.21四麻)」内のプレイヤー数を引用させていただき、グラフを作成しました。
shoshin(初心)、jong-shi1, 2(雀士1, 2)のデータがないせいか、ロケットリーグとは違い、右裾が長い分布になっています。仮にあったとしても尖度は高そうで特徴のある分布と言えそうです。統計学的にこれが麻雀というゲームをどう表しているかの考察は一旦置いておきますが、ぱっと見、jong-sei1(雀聖1)以降は修羅の道になりそうですね。
今僕のランクはjong-go2(雀豪2)なのでロケットリーグでいうと体感ダイヤモンドになれたといったところでしょうか。まだまだ精進が必要です。
 
ところで雀魂の高ランクのレベル帯(jong-sei:雀聖 以降)より全体的にレベルが高いと言われる天鳳という麻雀プラットフォームはご存知でしょうか。
なんと麻雀AIがこの天鳳で高ランクを取っているのです。
既に多くの人より強いAIが生まれており、多くの人はこのAIから学んでいるという好循環が生まれつつあります。
とはいっても最高ランクの「天鳳位」はまだほんの一部の人で成り立っており、AIが入る隙はなさそうです。
その違いも気になりますが、今回はAIが麻雀にもたらすの可能性について基本的なことから書いていきます。

第1章:麻雀:奥深い戦略と歴史に彩られたゲーム

麻雀と聞いて、何を思い浮かべますか?
タバコの煙が立ち込める雀荘、熱いお茶を片手に牌を混ぜる音、親戚同士の賑やかな場……。人それぞれ様々なイメージがあるかもしれませんね。
 

1-1. 古代中国から続く知のゲーム

麻雀は、その起源を19世紀後半の中国に持つ、歴史あるゲームです。幾つもの牌を組み合わせ、役を作り、点数を競う…一見シンプルなルールに見えて、実は非常に奥深い戦略性を秘めています。確率、心理戦、状況判断など、あらゆる要素が複雑に絡み合い、プレイヤーを魅了してやみません。
要素説明
確率配牌やツモなど、運要素が強い部分もあれば、手牌の進め方によってある程度確率をコントロールする戦略も重要になる。
心理戦相手の表情や捨て牌から、手の内や待ち牌を推理する。時にはブラフをかけて相手を翻弄することも。
状況判断場の状況や点差、残り牌などから、攻めるべきか守るべきか、最適な選択を瞬時に行う必要がある。
 

1-2. 世界に広がる麻雀文化

麻雀は中国から日本へ、そして海を越えて世界へと広がりを見せています。国や地域によってルールや文化は異なりますが、それでも人々を熱中させる魅力は共通していると言えるでしょう。
僕自身は、割と大人になってから麻雀を楽しみました。ただ何となく打っていただけでしたが、仕事やビジネスにおけるような期待値や状況判断が麻雀にも等しく大事なのだなと気づいて改めて麻雀の魅力に気づかされましたね。人生のシミュレーションしている感覚です。

第2章:AI技術:人間を超える知能を創造する挑戦

2-1. 人工知能:未来を形作るテクノロジー

人工知能、つまりAIは、人間の知能をコンピュータで再現することを目指す技術です。近年、ディープラーニングなどの技術革新により、AIは目覚ましい進化を遂げています。
 

2-2. 機械学習と深層学習:AIの進化を支える技術

機械学習は、大量のデータをコンピュータに学習させ、未知のデータに対しても予測や判断を行えるようにする技術です。そして、その機械学習の中でも特に注目されているのが深層学習です。深層学習は、人間の脳神経回路を模倣したニューラルネットワークを用いることで、従来の機械学習では難しかった複雑なデータ処理を可能にしました。
技術説明
機械学習コンピュータが大量のデータから自動で規則性やパターンを学習する技術。
深層学習機械学習の一種。人間の脳神経回路を模倣したニューラルネットワークを用いることで、より複雑な処理が可能に。
これらの技術により、顔認証システムや自動運転技術など、私たちの生活に身近なところでAI技術が活躍するようになりました。
 

2-3. 麻雀AIの可能性:複雑なゲームに挑むAI

AI研究者にとって、麻雀は格好の研究対象です。前述したように、麻雀は確率、心理戦、状況判断など、複雑な要素が絡み合うゲームです。AIはこのような複雑なゲームを攻略することで、その知能を飛躍的に向上させることができると考えられています。
例えば、AIが人間のプロ雀士に対しトータルで優れていれば、それはAIが複雑な状況下でも最適な判断を下せるようになったことを意味します。

第3章:麻雀AIの技術:戦略と学習の舞台裏

3-1. AIによる麻雀戦略の解析

麻雀AIはどのようにして戦略を立てているのか、気になりますよね?
麻雀AIは、過去の膨大な対局データを学習することで、最適な戦略を導き出します。これは人間のプロ棋士が過去の棋譜を研究するのと同じようなものです。しかしAIは、人間では到底処理しきれない量のデータを高速で解析することができるため、より短時間で効率的に学習することが可能です。
AIが行うこと説明
データの収集過去の対局データ(牌譜)を大量に収集する。
データの解析収集したデータから、牌の出現確率や有効な牌の組み合わせ、戦況に応じた最適な行動などを分析する。
戦略の構築解析結果に基づき、様々な状況下における最適な戦略を構築する。
 

3-2. モンテカルロ法と強化学習

麻雀AIの学習には、モンテカルロ法強化学習といった技術が使われています。これらの技術により、AIはより効率的かつ高度な学習が可能になります。
モンテカルロ法 は、何度もシミュレーションを繰り返すことで、最適な行動を確率的に導き出す方法です。例えば、「この場面でどの牌を切れば、最終的に勝利する確率が高くなるのか?」といった問題を、何度もランダムに牌を切らせてゲームをシミュレーションすることで解決します。
強化学習 は、試行錯誤を通じて報酬を最大化する行動を学習する方法です。AIはゲームをプレイする中で、勝利すると報酬が与えられ、敗北すると罰則が与えられます。この報酬と罰則のバランスを調整しながら学習することで、AIは徐々に勝利へと繋がる行動を学習していくのです。
技術説明
モンテカルロ法ランダムな試行を繰り返すことで、最適な行動を確率的に導き出す方法。麻雀AIでは、複数の手順をシミュレートし、最も勝率の高い行動を選択する際に用いられる
強化学習行動の結果によって報酬/罰則を与えることで、AI自ら学習を進める方法。麻雀AIでは、対局に勝利すると報酬が与えられ、敗北すると罰則が与えられる。この報酬と罰則を繰り返すことで、AIは勝利を目指すように学習する。
 

3-3. 麻雀AI「NAGA」:日本の麻雀界に革命を起こすか?

日本で有名な麻雀AIとして、「NAGA」があります。NAGAは、麻雀の高段位者の牌譜データを深層学習したAIです。その実力は、天鳳のプレイヤーレーティングにおいて「十段」という最高ランクに到達するほどです。
NAGAの登場は、日本の麻雀界に大きな衝撃を与えました. AIが人間のプロレベルに到達しただけでなく、従来の麻雀の常識を覆すような打ち筋を見せることもあるからです。

第4章:麻雀AIの可能性と課題

4-1. 麻雀AIの利点:スキルアップと戦略の進化

麻雀AIは、プレイヤーのスキルアップに大きく貢献します。AIを対戦相手とすることで、自分のレベルに合わせた実践的な練習が可能になります。また、AIは膨大なデータに基づいて最適な戦略を提示してくれるため、自分の弱点克服や新たな戦略の発見にも役立ちます。
メリット説明
スキルアップAIを対戦相手とすることで、実践的なトレーニングが可能になる。強さに応じて難易度を調整できるため、初心者から上級者まで、レベルに合わせた練習ができる。
戦略の進化AIの分析結果から、新たな戦略や戦術を学ぶことができる。AIは人間では気づかないような、データに基づいた最適な行動を提示してくれることもある。
 

4-2. 麻雀AIの課題:人間らしさと進化の壁

進化を続ける麻雀AIですが、まだ課題も残されています。
一つは、人間の心理的な要素を完全に再現することが難しいという点です。麻雀は確率や論理だけでなく、「相手の表情を読む」「ブラフをかける」といった心理的な駆け引きも重要な要素となります。現状では、AIが人間の心理を完全に理解することは難しく、それがAIの弱点の一つとなっています。
もう一つの課題は、未知の状況への対応です。AIは過去のデータに基づいて学習するため、今までにない新しい戦術やプレイスタイルが現れた場合、対応が遅れてしまう可能性があります。
 

4-3. 麻雀コミュニティへの影響

麻雀AIの登場は、麻雀コミュニティに大きな変化をもたらしました。初心者でも手軽に強くなれるツールとして、あるいは新たな戦略を生み出すパートナーとして、AIは麻雀界に新しい風を吹き込んでいます。
しかし、一方で「AIによって麻雀の面白さが損なわれるのではないか」という懸念の声もあがっています。AIが強すぎることで、人間同士のゲームバランスが崩れてしまう可能性も否定できません。
重要なのは、AIと人間がどのように共存していくか、という点です。AIはあくまでツールであり、最終的には人間が麻雀の面白さを発展させていく必要があるでしょう。

第5章:未来展望:麻雀とAIが創り出す未来

5.1. 未来の麻雀AI:さらなる進化の可能性

AI技術は日々進化を続けています。そして、その進化は麻雀AIにも大きな影響を与えるでしょう。
例えば、将来的には以下のような進化が期待されています。
  • より人間に近い思考回路の実現 AIが人間の心理状態や思考プロセスを理解することで、より高度な心理戦を展開できるようになる。
  • 個人に最適化されたアドバイス AIがプレイヤーの対局データを分析し、弱点や改善点を指摘してくれるようになる。
  • 全く新しい戦術の発見 AIが人間の棋譜データからは発想できないような、革新的な戦術を生み出す可能性もある。
 

5-2. 麻雀×AIが創造する未来

AI技術の進化は、麻雀というゲームをより深く、そしてより面白く進化させていく可能性を秘めています。
AIを対戦相手として、あるいは戦略パートナーとして、麻雀の世界は今後ますます広がっていくでしょう。
そして、AI技術によって、麻雀は世代や国境を超えて、より多くの人々に楽しまれるゲームへと進化していくと僕は信じています。