【失敗しないAIプロジェクト】企画と進め方
[updated: 2025-03-26]
こんにちは、Elcamyのデータサイエンティスト兼AIエンジニアの近江です。
最近、AI(人工知能)プロジェクトがいろんな業界で流行ってますよね。企業は業務を効率化したり、コストを削減したり、新しいビジネスチャンスを見つけたりするために、AI技術に熱い視線を注いでいます。
しかし、AIプロジェクトは基本的に複雑で、実際にやってみると計画段階でつまずいたり、期待したほどの成果が出なかったりすることが少なくありません。
だからこそ、AIプロジェクトを成功させるには、しっかりとした企画と計画が欠かせません。それは航海に出る前に、船の状態をチェックし、最新の海図を手に入れ、経験豊富な航海士を乗せるようなものです。
では、AIプロジェクトを成功に導くには、具体的にどんな準備や心構えが必要なのでしょうか?
今回は、僕が経験から得た知見を元に、「失敗しないAIプロジェクトの企画と進め方」について、具体的なステップに沿って解説していきます。
ElcamyではGoogle Cloudを用いたデータ分析基盤の構築や、生成AIを用いた業務支援まで対応可能です。生成AIやデータ活用によって事業を前に進めたい方は、お気軽にご相談ください。
ステップ1:プロジェクトの羅針盤をつくる - 目標設定の重要性

AIプロジェクトを成功させるための最初のステップは、プロジェクトの目標を明確にすることです。目標が曖昧だと、プロジェクトは霧の中で迷走する船のように、どこに向かっているのか分からなくなってしまいます。
重要な要素 | 説明 |
具体的かつ測定可能な目標の設定 | ただ「業務を効率化したい」と漠然と考えるのではなく、「どの業務の、どのプロセスを、どれくらい効率化したい」のか具体的に設定する必要があります。例えば、「カスタマーサポートの応答時間を、現在の平均5分から2分に短縮する」といった感じです。 |
ビジネス価値と技術的実現可能性のバランス | AIで何を実現したいのか(ビジネス価値)と、それを実現するための技術的な制約や費用対効果を考慮する必要があります。 |
関係者の期待値管理 | プロジェクトに関わる全ての人(経営陣、現場担当者、開発チームなど)の期待値を適切に調整し、共通認識を持つことが重要です。 |
例えば、「顧客 churn 予測モデルを開発する」というプロジェクトの場合は以下の3つのようになります。(※churn(チャーン):顧客が継続利用しているサービス、例えばサブスクを解約すること)
- 具体的かつ測定可能な目標 churn 予測の精度を80%以上にする。 churn 率を現在の5%から3%に減少させる。
- ビジネス価値と技術的実現可能性のバランス 予測モデル開発に必要なデータは取得可能か? 予測モデルの運用コストは予算内におさまるか?
- 関係者の期待値管理 予測モデルの精度や効果や導入スケジュールに関して関係者と事前に合意しておく。
目標設定は、プロジェクトの羅針盤を作るようなものです。関係者全員でしっかりと羅針盤を共有することで、プロジェクトは正しい方向へ進んでいきます。
ステップ2:最強のクルーを結成する - チーム編成と役割分担

AIプロジェクトは、一人の天才が全てを解決できるような単純なものではありません。それぞれの分野に秀でたメンバーが協力し、それぞれのスキルを結集する必要があります。
役割 | 必要なスキル |
プロジェクトマネージャー | プロジェクト管理、リーダーシップ、コミュニケーション能力 |
データサイエンティスト | 機械学習、統計学、プログラミング(Python, R)、データ解析ツール使用経験 |
データエンジニア | データベース管理、ETL 処理、プログラミング(SQL, Python)、クラウド技術 |
AI・機械学習エンジニア | 機械学習アルゴリズム知識、プログラミング(Python, TensorFlow, PyTorch)、システム設計 |
ビジネスアナリスト | ビジネス分析、コミュニケーション能力、業界知識 |
UX/UIデザイナー | デザインツール使用経験、ユーザー調査、プロトタイピング |
実際はデータサイエンティスト、データエンジニア、AI・機械学習エンジニアの役割を1人で担っているケースは多いです。しかしその方の負担や退職や体調不良などによる継続性のリスクが大きいため、可能であれば全てできる方がもう一人稼働できるような体制が望ましいです。
以下はイメージです。
案件X:Aさん(70%)、Bさん(20%)、Cさん(10%)
案件Y:Aさん(10%)、Bさん(40%)、Cさん(10%)
案件Z:Aさん(10%)、Bさん(30%)、Cさん(70%)
余力:各メンバー10%ずつ(R&Dやトラブル対応に回す)
各メンバーで役割をきっちり分担する場合は自分の役割をしっかりと理解し、フォロワーシップ(自分の業務だけでなく、他人が行なっている業務や業務全体を見通してフォローするような姿勢をここでは指しています)を取ることが重要です。