図1:揮発性メモリ(RAM)は電源を切るとデータが消え、非揮発性メモリ(SSD・HDD)は電源を切ってもデータを保持する
「メモリを増やせばパソコンは速くなる」「SSDは電源を切ってもデータが消えない」——このあたりまでは知っていても、揮発性メモリと非揮発性メモリが仕組みとしてどう違うのかを説明できる方は多くありません。DDR5やLPDDR6といった最新のメモリ規格が何を意味するのかとなると、なおさらです。
揮発性メモリと非揮発性メモリの違いは、電源を切ったときにデータが消えるか残るかにあります。RAMに代表される揮発性メモリは電源が切れると内容が消え、SSDやHDDに代表される非揮発性メモリは電源を切ってもデータを保持し続けます。
この記事では、両者の仕組みの違いを基礎から解説します。そのうえで、SSDの大容量化やPCIe Gen5対応による高速化、Intel Optaneのその後といった最新動向まで、初心者の方にもわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- 基本の違い:揮発性メモリは電源を切るとデータが消え、非揮発性メモリは電源を切ってもデータを保持し続ける仕組み
- DRAM・SRAMの仕組み:DRAMはキャパシタへの電荷蓄積とリフレッシュ動作、SRAMはフリップフロップ回路でデータを保持しており、この違いが生む速度と価格の差
- 最新のメモリ規格:JEDECが2020年7月に公開したDDR5と、2025年7月に公開したLPDDR6という最新規格
- SSD・HDDの仕組み:SSDはフローティングゲートへの電子の出し入れ、HDDは磁気ディスクの回転でデータを記録しており、3D NAND化やHAMR技術で大容量化が進んでいる
- 中間技術の現況:非揮発性で高速なMRAMの開発が進む一方、同様の位置づけだったIntel Optaneは2022年に新製品開発を中止
揮発性メモリと非揮発性メモリの違いは?
揮発性メモリと非揮発性メモリの違いは、電源を切ったときにデータが消えるか残るかです。「揮発性(volatile)」は英語で「蒸発しやすい」という意味で、電源という支えを失った瞬間にデータが蒸発するように消えてしまう、とイメージすると覚えやすくなります。
揮発性メモリは、電源供給中のみデータを保持するメモリです。代表例はRAM(Random Access Memory)で、処理速度が速く、CPUが計算に使うデータを一時的に置く場所として使われます。一方で非揮発性メモリは、電源を切ってもデータを保持し続けるメモリです。代表例はSSD(ソリッドステートドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)、USBメモリで、作成した文書や写真など長期的に残したいデータの保存に使われます。
コンピュータ内部の記憶装置は、この揮発性メモリ(主記憶装置)と非揮発性メモリ(補助記憶装置)を役割分担させることで成り立っています。記憶装置全体の階層構造については、別記事「メモリとは」でも解説しています。
揮発性メモリ(RAM)はどんな仕組み?
揮発性メモリの代表格であるRAMは、DRAMとSRAMという2種類の方式でデータを保持しており、どちらも電気信号で0と1を表現するため電源が切れると消えます。
図2:DRAMはコンデンサに電荷を蓄えて定期的なリフレッシュが必要な一方、SRAMはフリップフロップ回路でリフレッシュ不要に保持する
DRAMになぜリフレッシュが必要?
DRAM(Dynamic RAM)は、コンデンサ(キャパシタ)に電荷を蓄えることでデータを表現しています。バケツに水を入れて0と1を表すイメージに近く、時間が経つと自然に水が漏れてしまうため、数十ミリ秒ごとに電荷を注ぎ足す「リフレッシュ」という動作が欠かせません。
リフレッシュが必要であることに加え、DRAMは微小な電荷を検出して読み書きする構造のため、一般にSRAMよりアクセス速度が遅くなります。ただし、一般的なDRAMセルは1ビットを1個のトランジスタと1個のコンデンサ(1T1C)で保持するシンプルな構造のため、集積度を高めやすく、大容量化しやすく、容量あたりのコストを抑えやすいという利点があります。パソコンやスマートフォンのメインメモリに使われているのは、この特性によるものです。
なぜSRAMはキャッシュに使われる?
SRAM(Static RAM)は、電気のスイッチを組み合わせて「0」と「1」のどちらかの状態を保持し続ける「フリップフロップ」と呼ばれる回路構造でデータを保持するため、DRAMのようなリフレッシュ動作が不要で高速に読み書きできます。回路が複雑になる分だけ集積度を上げにくく、同じ容量ではDRAMより高価になる点がトレードオフです。
この「高速だが高価で小容量」という特性から、SRAMはCPUのすぐそばに置く少量のキャッシュメモリに向いています。CPU内部にはSRAMよりもさらに高速な記憶装置としてレジスタがあり、演算に使う値を直接保持しています。レジスタの仕組みについては、別記事「レジスタとは」で詳しく解説しています。
DDR5・LPDDR6で何が変わった?
DDR5とLPDDR6は、いずれもJEDEC(半導体の標準規格を策定する国際団体)が公開した最新のRAM規格で、従来世代より高速かつ省電力になっています。
DDR5
JEDECは2020年7月14日にDDR5規格(JESD79-5)を公開しました。DDR5は前世代のDDR4と比べて約2倍の性能と、より高い電力効率を実現する規格です(JEDEC Publishes New DDR5 Standard for Advancing Next-Generation High Performance Computing Systems)。現在では、デスクトップパソコンやサーバー向けメインメモリの標準規格として広く使われています。
LPDDR6
JEDECは続いて2025年7月9日、スマートフォンやAI処理向けの省電力規格であるLPDDR6(JESD209-6)を公開しました。LPDDR6は、メモリ内部の通信経路を2系統に分けた「デュアルサブチャネル構造」を採用しており、前世代のLPDDR5より高速な処理を実現しながら、電力効率とセキュリティも高めています(JEDEC® Releases New LPDDR6 Standard to Enhance Mobile and AI Memory Performance)。
デスクトップ向けの主流規格がDDR5、スマートフォンなどのモバイル機器向けの主流規格がLPDDRシリーズという住み分けです。
非揮発性メモリ(SSD・HDD)はどんな仕組み?
非揮発性メモリの代表であるSSDとHDDは、どちらも電源を切ってもデータが消えませんが、データを記録する仕組みはまったく異なります。SSDは電気的に、HDDは物理的にデータを記録します。
図3:SSDはフローティングゲートに電子を閉じ込めて電気的に記録し、HDDはプラッタを回転させ磁気の向きで物理的に記録する
SSDはどんな仕組み?
SSD(ソリッドステートドライブ)は、NAND型フラッシュメモリのチップとコントローラーで構成された、可動部品を持たない記憶装置です。HDDのようにディスクを回転させたりヘッドを移動させたりする物理的な動作がないため、読み書きが高速で衝撃にも強いという特徴があります。
データの記録には、絶縁された領域(フローティングゲート)に電子を閉じ込める仕組みを使います。書き込むときは、「トンネル効果」と呼ばれる現象を利用し、通常は電子を通さない絶縁層に電圧をかけて電子を無理やりくぐらせ、フローティングゲートの中に注入します。消去するときは逆向きに電圧をかけ、閉じ込めていた電子を引き抜きます。ゲートが絶縁体で囲まれているため、電源を切っても電子はその場にとどまり続け、DRAMのようなリフレッシュ動作も必要ありません。
ただし、この書き込み・消去を繰り返すたびに絶縁層はわずかずつ劣化するため、フラッシュメモリには書き換え回数に上限があります。1つのセルに記録するビット数を増やすほど、電子の量をより細かい段階で判別する必要が生じ、書き換え耐久性や速度が低下しやすくなるのはこのためです。
HDDはどんな仕組み?
HDDは、磁性体を塗布した円盤(プラッタ)を高速回転させ、磁気の向きでデータを記録する装置です。プラッタの表面すれすれの位置を読み書きヘッドが移動し、ヘッドが磁気の向きを変えることでデータを書き込み、向きを読み取ることでデータを読み出します。
読み書きヘッドが目的の位置まで移動する時間と、プラッタが回転して目的の位置に到達する時間がかかるため、電気信号だけでデータをやり取りするSSDに比べると読み書き速度は劣ります。一方で、高い記録密度のプラッタを複数搭載することで大容量化しやすく、同じ容量あたりの単価を安く抑えられるという利点があります。
SSDの大容量化はどこまで進んだ?
SSDの大容量化は、メモリセルを垂直に積み重ねる「3D NAND」化と、1つのセルに記録するビット数を増やす技術の両方で進んでいます。代表例として、KIOXIA・Sandiskの3D NANDフラッシュメモリ「BiCS FLASH」第10世代は、332層の積層構造で29Gb/mm²という記録密度を実現しています(1Tb 3bit/cell BiCS FLASH™ 第10世代製品の設計開発)。
現行世代のSSDはどれくらい速い?
現行世代のPCIe Gen5対応エンタープライズSSDは、前世代モデル比で最大約3倍のランダム読み取り性能を実現しています。例えば、Western DigitalのNVMe SSD「DC SN861」は、データを連続した順序ではなく、さまざまな位置から読み出す「ランダム読み取り」の性能が前世代比で約3倍に向上しています(Western Digital Enterprise SSDs Certified to Support NVIDIA GB200 NVL72 System for Compute-Intensive AI Environments)。
HDDはもう時代遅れ?
HDDは時代遅れではありません。Seagateの新技術「Mozaic 4+」(HAMR=熱アシスト磁気記録方式)により、最大44TBのHDDが量産出荷されるなど、大容量化は今も進んでいます(Seagate Delivers Industry's Highest Capacity Hard Drives with Next-Generation Mozaic™ 4+)。速度で選ぶならSSD、大容量・低コストで選ぶならHDD、という住み分けは今も続いています。
揮発性メモリと非揮発性メモリを比較すると?
図4:揮発性メモリ(RAM)と非揮発性メモリ(SSD・HDD)は、データ保持・速度・役割・コストの面で明確に役割分担している
揮発性メモリと非揮発性メモリの違いは、データ保持の可否だけでなく、速度・容量・コストにも及びます。それぞれの特性を整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 揮発性メモリ(RAM) | 非揮発性メモリ(SSD・HDD) |
|---|---|---|
| 電源を切った後のデータ | 消える | 保持される |
| 主な代表例 | DRAM、SRAM | SSD(NAND型フラッシュメモリ)、HDD |
| 処理速度 | 高速 | RAMより低速 |
| 主な役割 | 処理中のデータを一時的に保持する主記憶装置 | データを長期保存する補助記憶装置(ストレージ) |
| 容量あたりのコスト傾向 | 高め | 低め(特にHDD) |
この表からわかるとおり、RAMは「速さ」を、SSD・HDDは「持続性と大容量」を担う、役割の異なる記憶装置です。どちらか一方だけでは、コンピュータは効率よく動作しません。
揮発性と非揮発性の「中間」技術とは?
揮発性と非揮発性の「中間」技術とは、揮発性メモリの速さと非揮発性メモリの持続性を両立させる技術のことです。その開発は現在も進んでいます。
非揮発性でありながら高速な技術としては、磁気の向きでデータを記録するMRAM(Magnetoresistive RAM)が代表的です。米Everspin TechnologiesのSTT-MRAM(スピン注入トルクMRAM)は、以下の特徴を持つ技術として、データセンターや産業機器向けに製品展開されています(STT-MRAM Technology)。
- 長期のデータ保持性
- 高い書き換え耐久性
- 低消費電力
同様の位置づけだったIntel Optane(「3D XPointメモリ」という記憶素子を採用した製品群)は、DRAMほど高速ではないもののNANDフラッシュより高速な「ストレージクラスメモリ」として注目されていましたが、Intelは2022年に新製品開発の中止(段階的な事業縮小)を発表しています(Intel Corporation Form 8-K Q2 2022 Earnings Release)。
なぜ揮発性メモリと非揮発性メモリを組み合わせて使う?
MRAMのような高速な非揮発性メモリはすでに実用化されていますが、容量やコストなどの面からDRAMやNANDフラッシュを全面的に置き換える段階には至っていません。そのため、現在のコンピュータの多くは揮発性メモリと非揮発性メモリを明確に使い分ける設計を採用しています。処理速度を重視する揮発性メモリ(RAM)と、データを長期保存できる非揮発性メモリ(SSD・HDD)を役割分担させることで、高速な処理と確実なデータ保存を両立させているのです。
電源を入れると、OSやアプリケーションのデータはSSD・HDDからRAMへと読み込まれます。処理中はRAM上でやり取りすることで高速に動作し、ファイルを保存する操作をした時点で、内容がSSD・HDDへと書き戻されます。RAMだけではデータが消えてしまい、SSD・HDDだけでは処理速度が追いつかないため、両者を組み合わせる設計が現在のコンピュータの基本になっています。
揮発性・非揮発性の分類は、ITパスポートや基本情報技術者試験でも基礎知識として問われることがあります。「電源を切るとデータが消えるかどうか」という軸を押さえておくと、関連用語の整理がしやすくなります。
まとめ
揮発性メモリと非揮発性メモリの違いは、電源を切ったときにデータが消えるか残るかにあります。本記事のポイントを振り返ります。
- RAMなどの揮発性メモリは電源が切れるとデータが消える一方、SSDやHDDなどの非揮発性ストレージは電源を切ってもデータを保持できる
- DRAMはリフレッシュ動作、SRAMはフリップフロップ回路でデータを保持しており、そこから生まれる速度とコストのトレードオフ
- メモリ規格はDDR5・LPDDR6へと進化し、SSDは3D NAND化、HDDはHAMR技術によるそれぞれの大容量化
- MRAMなど、高速性を備えた非揮発性メモリ技術の開発が続く一方、2022年に新製品開発を中止したIntel Optane
- 揮発性メモリと非揮発性メモリを役割分担させることで実現する、速さと確実な保存の両立
普段何気なく使っている「メモリ」と「ストレージ」という言葉も、それぞれの仕組みを知ると、パソコンやスマートフォンのスペック表がぐっと読み解きやすくなります。
出典一覧
- 「JEDEC Publishes New DDR5 Standard for Advancing Next-Generation High Performance Computing Systems」 — JEDEC(2020-07-14)
- 「JEDEC® Releases New LPDDR6 Standard to Enhance Mobile and AI Memory Performance」(2025-07-09)
- 「1Tb 3bit/cell BiCS FLASH™ 第10世代製品の設計開発」 — KIOXIA(2025-06-18)
- 「Western Digital Enterprise SSDs Certified to Support NVIDIA GB200 NVL72 System for Compute-Intensive AI Environments」 — Western Digital(2024-10-14)
- 「Seagate Delivers Industry's Highest Capacity Hard Drives with Next-Generation Mozaic™ 4+」 — Seagate(2026-03-03)
- 「Intel Corporation Form 8-K Q2 2022 Earnings Release」 — Intel Corporation(SEC提出資料)(2022-07-28)
- 「STT-MRAM Technology」 — Everspin Technologies
関連サイト
- JEDEC — 半導体メモリの標準規格を策定する国際的な業界団体
- KIOXIA BiCS FLASH技術ページ — 3D NANDフラッシュメモリの技術解説ページ
- Everspin Technologies — STT-MRAMを中心に非揮発性メモリ製品を手がけるメーカー

執筆者:えだまめ
Elcamyでバックオフィスとブログ執筆を担当。AI未経験の状態からAI活用を学び、Claude CodeをはじめとするAIエージェントの実務活用法を発信している。
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