【ITサービスにおける収益モデル:成功の方程式】サブスクリプション・フリーミアム・従量課金のメリットとデメリット
[updated: 2024-07-30]
みなさん、こんにちは。
今回の筆者は株式会社Elcamyのデータサイエンティスト・AIエンジニアの近江俊樹です。
IT業界は進化の渦の中にあり、企業が生き残っていくためには、常に変化を恐れずに新たな道を切り拓いていくことが重要です。そして、そのための重要な鍵となるのが「収益モデル」です。
他社と同じようなサービスを展開していても、適切な収益モデルを選択できなければ失敗することでしょう。もっと言えば、他社と同じようなサービスを展開し、同じ収益モデルを選択していたとしても、自社特有の強みを潰してしまい、失敗することは多いと思います。
つまり良いサービスを生み出しても適切な収益モデルを選択できなければ、「持続可能な成長」と「高い顧客満足度」は実現できません。
しかし、ITサービスの収益モデルは多岐にわたり、どのモデルが自社にとって最適なのか迷ってしまうこともあるのではないでしょうか?
そこで今回は、ITサービスで主流となっている3つの収益モデル
1. サブスクリプションモデル(いわゆるサブスク)
2. フリーミアムモデル(無料)
3. 従量課金モデル(使った分だけ)
について、それぞれのメリット・デメリットに加えて、具体的な適用シーンや企業の選択基準を交えながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
1. 安定収益の大本命!サブスクリプションモデルとは?
「Netflix」や「Amazon Prime」といったサービス名を聞けば、サブスクリプションモデル(サブスク)が身近なものになったと感じる方も多いのではないでしょうか?
僕がもうちょっと若かった時は、「Amazonほんとにちゃんと届くの?怪しい」と思ってPrimeには入ってなかったです。今だとSHEINに同じような感覚を抱いていますが、上手くいけばAmazonを超えるかもしれませんね。
そんな今では当たり前となった「サブスクリプションモデル」とは、「ユーザーがサービスを利用するために、月額や年額などの定期的料金を支払うビジネスモデル」です。ユーザーは契約期間中、サービスを継続して利用することができます。
1-1. メリット:継続的な収益と顧客との絆
サブスクリプションビジネスの最大のメリットは、安定した収益を見込める点にあります。
毎月の収益が予測しやすくなるため、企業は財務計画が立てやすく、安定した経営基盤を築きやすくなります。
メリット | 説明 |
安定した収益 | 定期的な収入により、安定的な事業運営が可能になる |
顧客ロイヤルティの向上 | 継続利用を前提とした関係構築により、顧客満足度とロイヤルティが高まる |
予測可能なキャッシュフロー | 安定収入により、資金計画が立てやすく、戦略的な投資が可能になる |
顧客と長期的な関係を築きやすいという点も見逃せません。
続けてもらうにはサービスを改良し続けなければなりません。
結果、顧客との絆を深めることができれば、顧客単価の向上や口コミによる新規顧客獲得にも繋がりやすくなるでしょう。
1-2. デメリット:顧客獲得と価値提供の継続
魅力的なサブスクリプションビジネスの構築には、越えなければならない試練も存在します。
まず、新規顧客を獲得するためのマーケティングコストや、既存顧客の解約率を抑えるための施策(リテンション戦略)に、継続的な投資が必要となります。
「一度売ったら終わり」ではないので、常にサービスを改善し続ける必要があります。
デメリット | 説明 |
顧客獲得コストの高さ | 新規顧客獲得のためのマーケティング活動や顧客維持のための施策にコストがかかる |
継続的な価値提供の必要性 | 顧客満足度を維持するために、常にサービスの改善や新機能の追加などが必要 |
競争の激化 | 参入障壁が低いため競合が多く、価格競争に巻き込まれる可能性がある |
さらに、変化の激しいIT業界においては、顧客満足度を維持するために、サービスの改善や新機能の追加といった努力が常に求められます。
2. 広がりの速さが魅力!フリーミアムモデルを徹底解剖
「LINE」や「Twitter(現X)」のように、基本的なサービスは無料で提供し、より多くの機能や高度なサービスを利用したいユーザーに対して、料金を課金するモデルを「フリーミアムモデル」と言います。ゲームアプリにも多いですね。
2-1. メリット:ユーザー獲得の加速と収益化のバランス
フリーミアムモデルの最大のメリットは、無料サービスをきっかけに、多くのユーザーを獲得できる点にあります。
無料ユーザーが増えることでサービスの認知度が向上し、口コミやSNSを通じてさらにユーザーが増えていくという、好循環を生み出す可能性を秘めています。
メリット | 説明 |
広範なユーザーベースの獲得 | 無料で利用できるため、多くのユーザーを獲得しやすく、ブランド認知度の向上や口コミ効果によるさらなるユーザー獲得が期待できる。 |
サービスの普及促進 | 無料ユーザーの存在が、有料ユーザー獲得の基盤となる。 |
アップセルの機会 | 無料版でサービスの価値を体験してもらうことで、有料版へのアップグレードを促すことができる。 |
目指すのは、無料ユーザーと有料ユーザーのバランスを保ちながら、収益を最大化していくことです。
2-2. デメリット:無料ユーザーを有料ユーザーに変えるための戦略が必須
フリーミアムモデルにおいては、無料ユーザーをいかに収益に繋げていくかが大きな課題となります。
無料ユーザーを有料ユーザーへ転換させるための魅力的な機能やサービスの開発、効果的なマーケティング戦略が必要不可欠です。
デメリット | 説明 |
無料ユーザーの収益化の難しさ | 無料ユーザーからの収益は限定的であり、有料ユーザーへの転換率が低い場合は収益目標の達成が困難になる可能性がある。 |
高い運用コスト | 無料ユーザーの増加に伴い、サーバー増強やカスタマーサポートの拡充など、運用コストが増大する。 |
有料ユーザーへの転換率の低さ | 無料版の機能が充実しすぎると有料版のメリットが薄れ、顧客が有料版に移行しない場合がある。 |
無料ユーザーと有料ユーザー、両方のニーズを満たすサービス設計が、フリーミアムモデル成功の鍵と言えるでしょう。
私が個人的に一番好きなモデルですね。
サービスが良ければ無料ユーザーが自然と広告、マーケティングをしてくれますし、サービスが悪ければ無料ユーザーは何もしてくれず、一番「自然」なビジネスかなと思います。
いきなり完成度の高いサービスを作るとコスト的に破綻すると思うので、始めはコアな最低限の機能だけリリースして反応を見つつ、力の入れどころを探るのが良いのではないでしょうか。
やれる企業は限られていますが、PayPayのようにお金をかけまくって面を取りまくるというのも、ボードゲーム的思考の観点でいうと、王道かと思います。
3. 利用に見合った柔軟性!従量課金モデルを解説
クラウドサービスの普及に伴い、「使った分だけ支払う」というシンプルな料金体系の従量課金型ビジネスモデルが注目を集めています。
ユーザーが実際に利用したサービスの量に応じて課金されるため、無駄なコストを抑えたいという企業から支持されています。
3-1. メリット:ユーザーニーズに合わせた柔軟な料金体系
従量課金制の大きなメリットは、ユーザーが利用した分だけ支払うという、わかりやすく公平な料金体系にあります。細かすぎて分かりにくい時もありますが…(管理コストが増える)
利用量が少ないユーザーも気軽にサービスを利用開始することができ、利用量が増加するにつれて料金も上がるため、企業の事業成長にも柔軟に対応できます。
メリット | 説明 |
公平な料金体系 | 利用量に応じて課金されるため、ユーザーにとって無駄がなく、コスト意識の高い企業に受け入れられやすい。 |
利用量に応じた柔軟な課金 | サービスの利用状況に合わせて費用が変動するため、予算計画が立てやすく、事業規模の拡大にも柔軟に対応できる。 |
高い顧客満足度 | 利用量に基づいた透明性の高い料金体系であり、ユーザーはコストをコントロールできるため、満足度が高まる。 |
3-2. デメリット:収益予測と料金設定の複雑さ
従量課金型ビジネスモデルを採用する上での課題として、収益予測の難しさが挙げられます。ユーザーの利用量は常に変動するため、正確な収益予測を立てることが容易ではありません。
デメリット | 説明 |
収益の予測難易度 | 顧客の利用状況によって収益が変動するため、正確な予測が難しい。 |
料金設定の複雑さ | 利用量に応じた最適な料金体系の設計や、ユーザーが理解しやすい料金体系の提示など、複雑な料金設定が求められる。 |
利用頻度が低い顧客の維持が困難 | 利用頻度が低い顧客からの収益は小さくなる傾向がある。そのため、利用を促進するための施策や、低頻度利用の顧客に対する適切なサービス設計などが必要となる。 |
また、ユーザーにわかりやすく納得感のある料金体系を設計する必要があることも、重要なポイントです。
4. 自社に最適な収益モデルを探そう!
今回は代表的な3つの収益モデルについて解説しましたが、それぞれのモデルは一長一短であり、自社のサービスやターゲット、経営戦略に合わせて最適なモデルを選択することが重要です。
「基本サブスク、一部は追加で従量課金」のようなハイブリットモデルにしても良いかと思います。
収益モデル | メリット | デメリット | 適用シーン |
サブスクリプション | ・安定収入 ・顧客との長期的な関係構築 | ・顧客獲得コスト ・継続的な価値提供 ・競合の多さ | 定期的なサービス提供、顧客エンゲージメントの重要性が高いサービス |
フリーミアム | ・広範なユーザー獲得 ・低コストなマーケティング | ・無料ユーザーの収益化 ・高い運用コスト ・有料会員への転換率の低さ | 多くのユーザー獲得、幅広いユーザー層への訴求が必要なサービス |
従量課金 | ・公平な料金体系 ・柔軟な課金 ・顧客満足度の向上 | ・収益の予測難易度 ・料金体系の複雑さ ・低利用ユーザーの維持 | 利用量が変動するサービス、ユーザーの利用状況に合わせた課金が必要なサービス |
新しい収益モデルも次々と生まれてくる可能性もあります。
重要なのは
常に変化を恐れずに、最適な収益モデルを追求し続けること
持続可能な成長と顧客満足度を実現できるよう応援しております。
株式会社Elcamyでは、データ分析やAI技術を駆使して、企業のビジネス成長をサポートしています。
今回ご紹介した収益モデルの最適化・管理をAI用いて解決できないかというご相談はもちろん、その他データ分析やAI活用に関するお悩みなど、お気軽にお問い合わせください。