【データサイエンティストが解説】経営企画担当者が知っておくべきDX・AIの基礎知識と活用法

[updated: 2024-07-30]
 
こんにちは。今回の筆者はElcamyでデータサイエンティストをしている近江俊樹です。
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)といった言葉がビジネス界隈を賑わせていますね。
「DX」や「AI」を経営に活用すれば、業務が効率化して、会社も大きく成長する! そんな甘い言葉につられて、とりあえずDXやAIを導入しようとしている企業も多いのではないでしょうか?
しかし、ちょっと待ってください! DXやAIは、あくまで企業の成長を促進するための「ツール」でしかありません。
適切な知識や準備なしに導入しても、期待した成果を得ることは難しいでしょう。
そこで今回は、DX・AI導入でつまずく企業が多い原因を分析し、経営企画の立場から、DX・AIをどのように活用していくべきかを、わかりやすく解説していきます。
特に、これからDX・AI導入を検討している経営企画担当者の方にとって、この記事が未来への羅針盤となれば幸いです。

1. なぜ今、DXとAIが重要視されているのか?

近年のビジネス環境は、目まぐるしく変化しています。 グローバル化の進展、テクノロジーの進化、そして顧客ニーズの多様化…。
このような変化の荒波を乗り越え、生き残っていくためには、従来のやり方に固執していてはダメなのです。
そこで注目されているのが、DXAIです。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を駆使して、ビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革し、企業の競争力を強化していく取り組みです。 従来のアナログな業務をデジタル化するだけでなく、データ分析に基づいた戦略立案や、顧客体験を重視したサービス設計など、企業の体質そのものを変革していくことを目指します。
  • AI(人工知能)は、人間の知的能力をコンピューター上で実現する技術です。 大量のデータを学習し、複雑なパターンを分析することで、人間のように思考したり、判断したりすることが可能になります。
AIを活用することで、これまで人間が時間をかけて行っていた作業を自動化したり、より精度の高い予測を行ったりすることができるようになるため、企業はDXを推進する上で、AIは欠かせない存在となっています。
DXとAIは、それぞれが密接に関係し合いながら、企業の成長を力強く後押しする両輪のようなものです。
しかし、DXやAIは、あくまで「ツール」に過ぎません。
大切なのは、「自社の課題を解決するために、DXやAIをどのように活用していくか」という視点を持つことです。

2. DXでビジネスはどう変わる? ~ 具体的な事例と効果を紹介

「DX」という言葉はよく聞くけれど…
「具体的に、どんな風にビジネスが変わるの?」 「本当に効果があるの?」
そんな疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
そこで、DXによってビジネスがどのように変わるのか、具体的な事例を交えながら見ていきましょう。
企業名DXの取り組み内容効果
アマゾンAIを活用したレコメンドエンジン売上増加、顧客満足度向上
トヨタIoTを活用した生産ラインの効率化品質管理の精度向上、生産効率の大幅な改善
スターバックスモバイルオーダー&ペイの導入店舗の混雑緩和、顧客利便性の向上、顧客単価の増加
ユニクロRFIDタグによる在庫管理、セルフレジ導入在庫管理の効率化、顧客待ち時間の短縮
これらの事例からわかるように、DXは、各企業の課題に合わせて導入することで、以下のような効果をもたらします。
  • 業務の効率化・コスト削減 手作業で行っていた業務をデジタル化・自動化することで、業務効率が向上し、人為的なミスも減らすことができます。その結果、コスト削減にもつながります。
  • 顧客体験の向上 顧客データを分析し、ニーズに合わせたサービスや情報提供が可能になることで、顧客満足度を高め、長期的な関係を築くことができます。
  • 新商品・サービスの開発 データ分析に基づいて、顧客ニーズを的確に捉え、 innovative な商品やサービスを開発することができます。
このようにDXは、企業の収益向上、ブランドイメージ向上、そして競争力強化に大きく貢献する可能性を秘めていると言えるでしょう。

3. AIってどんなことができるの? ~ 定義・種類・活用事例を紹介

「AI(人工知能)」という言葉は、最近ニュースでも頻繁に見聞きするようになりました。
しかし、 「AIって具体的にどんなことができるの?」 「私たちの生活や仕事にどう関わってくるの?」
そう思われている方も少なくないでしょう。
AIは、もはやSFの世界の話ではなく、私たちの身近なところで活用され始めている技術なのです。
 

3-1. AI(人工知能)の定義

AIは一言で表すと、「人間の知的能力をコンピューター上で実現する技術」のことです。
具体的には、「学習」「推論」「認識」「判断」といった人間の知的活動をコンピューターに行わせる技術を指します。
 

3-2. AI(人工知能)の種類

AIは、その能力や用途によって、大きく3つの種類に分類されます。
種類説明
特化型AI特定のタスクを実行することに特化したAI(例:顔認証システムやスパムメールフィルターなど)
汎用型AI人間のように幅広いタスクを実行できるAI。 まだ完全には実現には至っていません。
超知能型AI人間の知能を超えたAI。 将来的な可能性として議論されていますが、実現は未定です。
現段階で実用化されているAIの多くは「特化型AI」です。
例えば、スマートフォンの音声アシスタントや、ECサイトのおすすめ商品表示、自動運転技術など、私たちの身の回りには、すでに多くのAIが活躍しています。
 

3-3. AIでできること・できないこと

それでは、AIは具体的にどのようなことができるのでしょうか? また、逆にできないことは何でしょうか?
以下に、AIができることとできないことを具体例を交えながらまとめてみました。
できること具体的な例
大量のデータ分析顧客データ分析による購買行動予測、売上予測
定型業務の自動化データ入力、請求書処理、メール配信
24時間365日稼働カスタマーサポートへの対応、システム監視
人間にはない視点からの分析大量の医療データから、新たな治療法を発見
できないこと説明
倫理観や道徳観に基づいた判断AIはデータに基づいて判断するため、倫理的な判断は難しいです。
創造性や発想力が必要な作業AIは過去のデータから学習するため、全く新しいものを生み出すことは苦手です。
人間とのコミュニケーションや共感AIは人間のように感情や共感を持つことはできません。
 

3-4. 機械学習とディープラーニング

AIの技術の中でも、特に注目されているのが「機械学習」と「ディープラーニング」です。
技術説明
機械学習大量のデータを分析し、その中に潜むパターンやルールを自動的に学習していく技術。
ディープラーニング機械学習の中でも、人間の神経回路網を模倣した「ニューラルネットワーク」を用いて、より複雑なデータ分析を行う技術。 画像認識や音声認識で高い精度を発揮。
これらの技術は、AIがより賢く、より人間の知能に近づくために欠かせないものです。

4. 経営企画でDX・AIをどう活用する? 具体的なステップと成功の秘訣

DXやAIは、経営企画の仕事にどのような変化をもたらすのでしょうか。
具体的に、DX・AIを活用した業務改革のステップを見ていきましょう。
 

4-1. 現状分析と課題の洗い出し

まずは、現状の業務プロセスを可視化し、課題を明確にすることから始まります。
  • 業務フローの可視化 各部署の業務内容、担当者、作業時間などを書き出し、業務の流れを図解します。
  • 課題の明確化 業務フローの中で、非効率な箇所、時間やコストがかかりすぎている箇所、ヒューマンエラーが発生しやすい箇所などを洗い出します。
  • データの棚卸し どの業務で、どのようなデータが、どの程度の量、頻度で発生しているのか、データの保管場所や形式などを整理します。
このステップでは、現場の担当者へのヒアリングや、データ分析ツールなどを活用しながら、現状を客観的に把握することが重要です。 現場の声を丁寧に拾い上げることで、課題解決のヒントが見えてきます。
 

4-2. 明確な目標設定と戦略立案

次に、DX・AI導入によって「どのような状態を実現したいのか」というビジョンを明確化し、具体的な目標を設定します。
  • ビジョン・目標設定 例えば、「リードタイムを20%短縮する」「売上予測の精度を10%向上させる」「間接業務を30%削減する」など、数値目標を設定します。
  • KPIの設定 設定した目標の達成度を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIは、具体的な数値で測定できるものにします。
  • ロードマップの作成 短期、中期、長期的な視点で、どのようなステップでDX・AIを導入していくのか、具体的な計画を立てます。
 

4-3. 適切なツールと技術の選定

  • ツール選定 目標達成のために必要な機能を備えたツールを選びます。費用対効果や使いやすさも考慮しましょう。
    • データ分析ツール:データの収集・蓄積・分析・可視化を行うためのツール
    • RPAツール:定型業務を自動化するツール
    • AIプラットフォーム:AIモデルの開発・学習・運用を行うためのプラットフォーム
  • ベンダー選定 ツールの導入やサポート体制が充実している、信頼できるベンダーを選びます。実績や導入事例などを参考にすることも有効です。
 

4-4. 社内教育と組織体制の整備

DX・AIを導入するだけでなく、社員が新しいツールや技術を使いこなせるよう、教育体制を整えることが重要です。
  • 研修の実施 DX・AIに関する基礎知識や、ツールの使い方などを学ぶ研修を定期的に実施します。
  • 専門人材の育成 データ分析やAI開発など、専門的なスキルを持った人材を育成します。外部の研修機関を利用することも有効です。
  • 組織体制の整備 DX・AI導入を推進するための専任チームを設けます。また、各部署と連携しながらプロジェクトを進められる体制を構築します。
DX・AI導入は、単なるシステム導入ではなく、企業文化や働き方そのものを変革していく取り組みです。 経営層から現場まで、全社員を巻き込み、意識改革を進めていくことが大切です。
 

4-5. 試行錯誤を繰り返しながら継続的な改善を

DX・AI導入は、一度導入すれば終わりではありません。 むしろ、導入してからが本番です。
  • 効果測定 設定したKPIに基づいて、DX・AIの効果を定期的に測定します。
  • 改善 効果が低い場合は、その原因を分析し、ツールやシステムの見直し、業務プロセスの改善などを行います。
PDCAサイクルを回し、継続的に改善していくことが、DX・AI導入を成功に導くための最大の秘訣です。

5. DX・AI導入の成功事例と失敗事例

実際にDX・AI導入に取り組んだ企業の事例を見てみましょう。
成功例だけでなく、失敗例からも学ぶことで、より効果的なDX・AI導入につなげることができます。

5-1. 成功事例

企業名取り組み内容効果
アマゾンAIを活用したレコメンドエンジンの開発・導入売上増加、顧客満足度向上、顧客一人ひとりに最適化されたサービス提供
トヨタIoTセンサーによる生産ラインのリアルタイム監視設備故障の予兆検知による稼働率向上、生産効率の向上、品質管理の高度化
NetflixAIを活用した顧客の視聴履歴分析好みに合わせた作品レコメンドによる顧客満足度向上、解約率の低下
これらの企業は、DX・AIを戦略的に活用することで、目覚ましい成果を上げています。
これらの成功事例から共通して言えることは、以下の3点です。
  • 経営層の強いリーダーシップ トップダウンでDX・AI導入の重要性を共有し、全社を挙げて取り組む体制を構築している
  • 明確なビジョンと戦略 「何のためにDX・AIを導入するのか」「どのように活用するのか」というビジョンと戦略が明確
  • データ分析力の高さ 蓄積したデータを分析し、ビジネスに活用することで、競争優位性を築いている
 

5-2. 失敗事例

企業名取り組み内容失敗の原因教訓
アメリカ大手小売POSデータを活用した顧客分析データ分析結果を活かせず、顧客ニーズとずれた商品開発を進めてしまった。データ分析結果を、商品開発やマーケティング戦略に反映させることが重要
日本の大手製造業最新鋭の製造設備を導入したが、現場に定着せず現場の意見を聞かずにシステム導入を進めたため、現場との間に溝ができてしまった。現場を巻き込み、スムーズな導入と運用体制を構築することが重要
シリコンバレーのスタートアップAIを使った自動運転技術の開発AIの過信による事故が発生し、開発が頓挫した。AIの倫理的な問題や安全性を考慮した開発体制を構築することが重要
これらの失敗事例から学ぶべき点は、以下の通りです。
  • 目的と手段を履き違えない 最新技術を導入することが目的になってしまい、本当に解決すべき課題が見失われていないか?
  • 現場を巻き込むことの重要性 現場の意見を軽視し、トップダウンで進めてしまうと、反発を生み、導入がスムーズに進まない可能性があります。
  • 倫理観と責任感 AIなど、新しい技術を導入する際には、倫理的な問題や社会への影響を考慮することが重要です。

6. DX・AIで経営企画はどう進化する? ~ 未来を見据えた心構え

最後に、DX・AI時代の経営企画に必要なスキルと、未来を見据えた心構えについてお話します。
DX・AIは、私たちの仕事や働き方を大きく変える可能性を秘めています。
一方で、DX・AIはあくまでツールであり、それらを使いこなすのは「人間」です。
 
「AIに仕事を奪われる」と不安視するのではなく、AIを活用して、より創造的な仕事、より人間らしい仕事に集中できる未来を描いていきましょう。
 
「変化を恐れず、常に学び続けること」
「新しい技術を積極的に受け入れること」
 
この2つを胸に刻み、DX・AIの波を乗り越えていきましょう!

7. ElcamyではDX推進を支援しています!

株式会社Elcamyでは、データ分析・AI開発のエキスパートチームが、お客様のDX推進を力強くサポートいたします。
 
「DXって具体的に何をすればいいの?」 「AIを導入してみたいけど、何から始めればいいか分からない…」
 
そんな悩みをお持ちの経営企画担当者様は、ぜひお気軽にElcamyにご相談ください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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