【アフリカのAmazon】ジュミアテクノロジーズが狙うアフリカECの覇権
[updated: 2024-07-30]
こんにちは。今回の筆者はデータサイエンティスト・AIエンジニアの近江俊樹(おうみとしき)です。
ところで、友人から「アフリカのAmazonのジュミアテクノロジーについて記事を書いてほしい」とさらっと言われ、僕自身何も知らなかったのでアフリカはAmazonが主流じゃないのかと驚いていました。
僕自身、株式投資が得意でそういった世の流れ?には敏感な方だったのですが、アフリカを抑えることができれば確かにパワーバランス崩れるかもしれないなと思い、非常に興味が出てきました。
そこで今回は色々調べながら、なるべく概要がわかるようにまとめてみました。
参考になる文献がほとんど英語だったのでジュミアについて日本語で書かれている記事はもしかしたら珍しいかもしれません。
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1. ジュミアテクノロジーズってなに?
ジュミアテクノロジーズ(Jumia Technologies:JMIA)は、「アフリカのAmazon」とも称される、アフリカ最大級の電子商取引(EC)プラットフォームです。

2012年に元マッキンゼーのコンサルタントであるジェレミー・ホダラとサシャ・ポワニック、トゥンデ・ケヒンデ、ラファエル・コフィ・アファエドーによって、ナイジェリアで設立されました。
そしてエジプト、モロッコ、コートジボワール、ケニア、南アフリカへと拡大し、2014年にはチュニジア、タンザニア、ガーナ、カメルーン、アルジェリア、ウガンダにも拠点を開設、2018年までには14か国に展開、そして現在はアフリカ全土にわたる市場をターゲットにしています。
ジュミアはドイツのベルリンに本拠を置く会社で、アフリカ全域でマーケットプレイス、物流サービス、決済サービスなどを提供しています。
ジュミアのプラットフォームは、単なるオンラインマーケットプレイスにとどまらず、支払い・食品配達・旅行サービスなど、幅広いサービスを提供しています。
これにより、アフリカの消費者の多様なニーズに応えることができ、競合と差別化を図っています。
例えば、物流サービスは地元のパートナーと連携し、配送を可能にしており、決済サービスは100,000人以上の売り手や個人と提携しています。
以下が展開しているサービスです。
ジュミアトラベル | ホテル予約プラットフォーム |
ジュミアフード | 食品配送プラットフォーム |
ジュミアディール | マーケットプレイスサービス |
ジュミアワン | 請求書支払いアプリ |
ジュミアペイ | 安全な決済システム |
ジュミアローン | 貸付プログラム |
ジュミアは、アフリカにおけるEC市場の草分け的存在であり
「地域特化の戦略」+「物流一連の流れを最適化」+「さまざまな工程を一元管理」
をすることで、アフリカの消費者に新しい購買体験を提供しています。
アフリカは人も多く色々複雑そうなのにすごいですね。
昔、知人からアフリカは日本よりキャッシュレスが進んでいると聞いたことがあるので、もしかしたら意外とやりやすかったのかな?
今後数年間、アフリカ市場は都市化・インターネットの普及・スマートフォンの浸透によりさらに大きな成長が見込まれています。
アフリカは、広大な土地と多様な文化を持つ地域であり、その分、多くの課題がありますが、ビジネスチャンスにも満ちており、ジュミアはその先駆者として、大きなアドバンテージを得たと言えます。
本記事では、ジュミアテクノロジーがどのようにしてアフリカEC市場の覇権を狙っているのか、その強みや競合他社との比較、成長戦略、直面する課題について詳しく解説します。
2. ジュミアテクノロジーズ (Jumia Technologies)の詳細情報
この章はジュミアについての情報をまとめています。
それぞれの情報についてこう思う・今後はこうなるだろうなどといったコメントは一切載せていないので、特に気にならない方は一旦読み飛ばしていただいて結構です。
会社タイプ | 公開会社 |
取引所 | NYSE: JMIA |
業界 | Eコマース、インターネット、小売、マーケットプレイス、決済、物流 |
設立年 | 2012年 |
本社 | ナイジェリア、ラゴス |
創設者 | ジェレミー・ホダラ、サシャ・ポワニック、トゥンデ・ケヒンデ、ラファエル・コフィ・アファエドー |
主要人物 | フランシス・デュファイ (CEO)、アントワーヌ・マイエット・メゼレイ (財務・運営担当副社長) |
従業員数 | 3,000人 |
ウェブサイト | group.jumia.com |
主なイベント
- 2015年に収益2億3400万ドルを達成し、2014年から265%の成長を記録しました。
- 2016年に評価額が10億ドルを超えるアフリカ初のユニコーン企業となりました。
- 2018年11月に仮想通貨企業Telcoinと提携し、支払いサービス能力を強化しました。
- 2019年4月にニューヨーク証券取引所に上場し、1億9600万ドルの純収益を調達しました。
提携
- 2020年にReckitt Benckiserと提携して衛生製品を提供。
- 国連開発計画(UNDP)と提携し、中小企業が消費者とオンラインで接続できるプラットフォームを立ち上げました。
- UNICEFと提携してGigaプロジェクトを支援し、アフリカの学校にインターネット接続を提供しました。
ロジスティクス(簡単にいうと物流を効率化すること)
- 物流ネットワークには倉庫、ドロップオフステーション、ピックアップステーションがある。
- 2020年に物流サービスを第三者向けに提供開始。
決済
- 2021年にエジプトでJumiaPayの支払いサービスプロバイダー(PSP)を立ち上げました。
- 2024年5月にナイジェリアで「今買って後で払う」パートナーシップを開始し、エジプトでもJumiaPayとContactの提携を拡大しました。
広告
- 2019年に企業向けに広告スペースを開放。
- 2022年にデジタル広告収入成長率でアフリカで第1位、世界で第3位となりました。
ウェブサイト
Country | Domain name | Since |
Algeria | jumia.dz | May 2013 |
Egypt | jumia.com.eg | July 2012 |
Ghana | jumia.com.gh | May 2014 |
Ivory Coast | jumia.ci | May 2013 |
Kenya | jumia.co.ke | May 2013 |
Morocco | jumia.ma | July 2012 |
Nigeria | jumia.com.ng | June 2012 |
Senegal | jumia.sn | May 2013 |
South Africa | jumia.co.za | July 2012 |
Tunisia | jumia.com.tn | N/A |
Uganda | jumia.ug | June 2016 |
3. ジュミアテクノロジーの強み
地域特化の戦略
ジュミアの最大の強みの一つは、地域特化の戦略です。アフリカは54の国と異なる文化、言語、経済状況を持つ多様な大陸です。
ジュミアは、この多様性を理解し、各市場に適応したサービスを提供することで成功しています。
(2018年時:14か国へサービス提供)
各国の消費者の購買行動や好みに応じて商品ラインナップを調整し、現地の言語でのサポートを提供しています。

物流ネットワーク
アフリカの物流インフラは他の地域と比較して未発達であり、多くの企業にとって大きな課題となっています。
ジュミアは、この課題に対処するために自社の物流ネットワークを構築しました。
ジュミアロジスティクスは、倉庫、配送センター、ラストマイルデリバリー(デリバリーセンター(例えばヤマト渋谷1丁目センター)からユーザー指定のお届け先までの最後の配送のこと)を包括するシステムであり、効率的な商品配送を実現しています。
これにより、ジュミアは信頼性の高い配送サービスを提供し、顧客満足度を高めています。

支払いソリューション
アフリカでは、多くの人々が銀行口座を持っていません。
ジュミアは、この問題に対応するために、ジュミアペイ(JumiaPay)という独自の支払いソリューションを提供しています。
ジュミアペイは、モバイル決済やキャッシュオンデリバリー(代金引換)など、さまざまな支払い方法をサポートし、消費者にとって利便性の高い支払い環境を整えています。
銀行がないと逆にキャッシュレスの浸透は早いのかもしれませんね。

(引用:app store)
4. 競合と比較
アフリカ市場における他のECプラットフォーム
アフリカのEC市場には、ジュミア以外にもいくつかの主要な競合が存在します。
これらのプラットフォームもジュミアと同様に、地域特化のサービスを提供し、アフリカ市場でシェアを拡大しようとしています。
- Konga ナイジェリアを拠点とするKongaは、ジュミアの主要な競合の一つです。Kongaは、B2CとC2Cの両方の市場を提供しており、独自の物流ネットワークを持っています。また、KongaPayという独自の支払いシステムを導入し、決済の利便性を高めています。

- Takealot 南アフリカを拠点とするTakealotは、南アフリカ市場で最大のECプラットフォームの一つです。広範な商品ラインナップと強力な物流インフラを持ち、迅速な配送サービスを提供しています。また、TakealotはMobicredというクレジットサービスを提供し、消費者が簡単にクレジットで商品を購入できるようにしています。

- Kilimall ケニアを拠点とするKilimallは、東アフリカ市場で急成長しているECプラットフォームです。Kilimallは、中国のAlibabaとのパートナーシップを活かし、幅広い商品を低価格で提供しています。さらに、Kilimallは現地の物流パートナーと提携し、迅速な配送サービスを実現しています。

ジュミアの競争優位性
ジュミアは、以下の点で競合他社に対する競争優位性を持っています。
- 広範な地域カバレッジ ジュミアは、アフリカ全土にわたる14か国以上でサービスを展開しており、他の競合と比較して広範な地域カバレッジを持っています。これにより、ジュミアはさまざまな市場でブランド認知を高め、多様な顧客層にリーチすることができます。
- 包括的なサービス提供 ジュミアは、オンラインマーケットプレイスにとどまらず、物流、ジュミアペイ、ジュミアフード、ジュミアトラベルなど、多様なサービスを提供しています。この包括的な戦略により、ジュミアは顧客の多様なニーズに対応し、プラットフォームの利便性を高めています。

グローバル企業との比較
ジュミアは「アフリカのAmazon」と呼ばれますが、グローバル企業との比較においてもいくつかの重要な点があります。
- Amazonとの比較 Amazonは、世界最大のECプラットフォームとして知られており、強力な物流ネットワークと高度な技術力を持っています。ジュミアも同様に、自社の物流ネットワークとテクノロジーを駆使してアフリカ市場での競争力を高めていますが、インフラの整備や市場規模においては、まだAmazonには及びません。
- Alibabaとの比較 Alibabaは、中国を拠点とするECの巨人であり、広範な商品ラインナップと強力なサプライチェーンを持っています。
AmazonやAlibabaのようなグローバル企業がアフリカ市場に進出する際には、ジュミアの地域特化戦略が大きな障壁となり、ジュミアはその優位性を生かせる間、次の一手を打つべきでしょう。
5. 成長戦略
拡大計画と市場展開
ジュミアは、アフリカ全土での事業拡大を目指しており、現在14か国以上でサービスを展開しています。各国市場の特性に応じたアプローチを取り入れ、地域ごとにカスタマイズされたサービスを提供することで、顧客基盤を拡大しています。
ジュミアの拡大計画には、以下のような具体的な施策が含まれています。
- 癖のある未開拓の市場への早期に参入 ジュミアは、インターネットとスマートフォンの普及が進む新興市場に積極的に参入しています。特に、未開拓の都市部や地方に対してサービスを拡大することで、新たな顧客層を獲得しています。
- 多文化に対応するために商品の多様化 ジュミアは、消費者の多様なニーズに応えるために、商品ラインナップの拡充を図っています。消費者は一つのプラットフォームで必要なすべてのものを購入することができるようになります。
パートナーシップとコラボレーション
ジュミアは、成長戦略の一環として、パートナーシップとコラボレーションを積極的に推進しています。これにより、サービスの拡充と市場での競争力を強化しています。
- 物流パートナーとの協力 ジュミアは、現地の物流パートナーと提携することで、配送ネットワークの効率化と拡大を図っています。これにより、迅速かつ信頼性の高い配送サービスを提供し、顧客満足度を向上させています。
- ブランドとの提携 ジュミアは、地域の有力ブランドや国際ブランドと提携し、独占的な商品や特別なプロモーションを提供しています。これにより、ジュミアのプラットフォーム上での消費者体験を向上させ、ブランドの信頼性を高めています。
テクノロジーの活用とイノベーション
ジュミアは、最新の技術を導入することで、サービスの効率化と顧客体験の向上を実現しています。
- AIとデータ分析 AIとデータ分析を活用して、消費者の行動パターンを分析し、個々のニーズに合わせたパーソナライズドなサービスを提供しています。これにより、マーケティング効率の向上と顧客ロイヤルティの強化を図っています。
- モバイルプラットフォームの強化 アフリカでは、多くの消費者がスマートフォンを主なインターネットアクセス手段として利用しています。ジュミアは、モバイルプラットフォームの強化に力を入れており、ユーザーが快適にショッピングできるアプリやモバイルウェブサイトを提供しています。
6. 課題と展望
インフラの問題
アフリカのEC市場には、多くの成長の機会がある一方で、いくつかの課題も存在します。
その一つがインフラの未整備です。

- 物流インフラの不備 アフリカの多くの地域では、道路や配送網などの物流インフラが整っていないため、商品を迅速かつ安全に届けることが難しい場合があります。ジュミアは、自社の物流ネットワークを構築してこの問題に対処していますが、依然として改善の余地があります。
- インターネットの普及 アフリカ全体でインターネットの普及率は徐々に上がっているものの、まだ多くの地域でアクセスが限られています。これにより、オンラインショッピングを利用できる顧客層が制限されている現状があります。
規制と政治リスク
アフリカは多くの国で構成されており、それぞれの国に異なる規制と政治リスクがあります。
- 規制の複雑さ 各国の異なる規制や関税制度が、ジュミアのような企業にとって運営の複雑さを増しています。特に、越境取引における税関手続きや輸入規制は、商品の供給チェーンに影響を与える可能性があります。
- 政治的不安定性 一部のアフリカ諸国では、政治的不安定性や紛争が経済活動に影響を及ぼしています。これにより、市場環境が急激に変動するリスクがあり、ビジネスの継続性に対する脅威となります。
未来の展望と持続可能な成長
ジュミアがこれらの課題を克服し、持続可能な成長を遂げるためには、いくつかの戦略が必要です。

- インフラ投資 引き続き、現地の物流インフラ改善のための投資を続ける必要があります。これには、自社の物流センターの拡大や、現地の配送パートナーとの協力強化が含まれます。また、インターネット改善も行うことで、EC市場の成長を支えることができます。
- 規制対応とリスク管理 各国の規制に柔軟に対応するために、現地の法令や税制に精通した専門チームを持つことが重要です。また、政治リスクに対するリスク管理戦略を策定し、危機発生時にも迅速に対応できる体制を整えることが必要です。
- イノベーションを続ける AIやデータ分析技術のさらなる活用を進め、顧客体験を向上させるための新たなソリューションを導入し続ける必要があります。
7. 結論
ジュミアは、アフリカのEC市場におけるリーディングカンパニーとして、数々の強みと独自の戦略で市場を牽引しています。
地域特化のアプローチ、強力な物流ネットワーク、独自の支払いソリューションなど、競争力のある要素を持ちながら、アフリカ全土での影響力を拡大しています。
ジュミアがアフリカのEC市場の覇権を握るためには、引き続きインフラの改善、規制対応、技術革新など、さまざまな課題に取り組む必要があります。
しかし、アフリカの潜在力・成長を考えれば、割りに合う投資と言えるでしょう。
「面倒くさいの先にしかオアシスはない」
・・・これは僕の言葉です(笑)
似たようなことを表す名言は他にもたくさんあると思いますが、それだけ真実なのでしょうね。
地域に特化したり、インフラを0から作ったり、法的トラブルを解消したりと色々大変なことを今後もジュミアは続けないといけないと思いますが、頑張ってほしいですね。
最後に、僕は株式投資(厳密には株式トレード)が好きなので、株価をついでに見てみました。

2019から2020年にかけて上場ゴールになってしまったように見えますが、2021年あたりで上昇し、その後、ずるずる下落して燻っていますね。
ここ最近の値動き的には直近の高値のいくつかを更新しているので、まずは20ドルくらいまでは上昇してもおかしくなさそうだなとは個人的に思いました。
本ブログの内容は情報提供のみを目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。投資にはリスクが伴い、元本の損失が発生する可能性があります。必ずご自身で十分な調査を行い、必要に応じて専門家にご相談の上、意思決定を行ってください。