
「モチベーションで仕事しないで」「それ、MECEじゃない」――コンサルの現場で働き始めた頃、上司やメンターからの指摘に戸惑った経験はないでしょうか。
これらの指摘は、あなたの人格を否定するものではありません。多くの場合、クライアントから不信感を持たれる前に、社内で軌道修正するための警告です。
なお、指摘する側にも、一言だけでなく背景や理由を添えて伝える工夫が求められます。
この記事では、コンサル初心者が「作業者」から抜け出すために言われる代表的な言葉を、9つの観点に整理して解説します。それぞれの指摘の背景にある本質的な問題、ロジカルシンキングとの関係、そして明日から実行できる対策までまとめました。
- 上司・メンターの厳しい指摘が持つ、社内アラートとしての本当の意味
- プロフェッショナルスタンスから推進力まで、コンサルに求められる9つの観点
- MECE・ロジックツリー・ピラミッドストラクチャー・仮説思考・イシュー思考など、ロジカルシンキングの考え方と現場のあるある発言の関係
- 各観点について、明日から実行できる具体的な対策
- 34の代表的なあるある発言の一覧表
第1章:プロフェッショナルスタンス|なぜ「モチベーションで仕事しないで」と言われるのか?
気分や好き嫌いによってアウトプットの質が変わると、クライアントから「安定して任せられない人」という印象を持たれてしまうためです。
コンサルの現場では、次のような指摘をよく耳にします。これは、いつも高いモチベーションで働くことを求めているわけではありません。モチベーションが高い日に頑張ることは、誰にでもできます。プロとして本当に必要なのは、モチベーションが高くない日でも、一定の品質を保ち、期限内に、相手が判断できるアウトプットを出すことです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから見た印象 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 気分や好き嫌いで品質が変わる | モチベーションで仕事しないで/好き嫌いで仕事しないで/気分でアウトプットを変えないで | 相手や仕事内容によって品質が変わる/安定して任せにくい人に見える | 最低品質基準・期限・チェックリストで仕事を管理する |
| 不満で止まり、改善につながらない | 文句じゃなくて代案を出して/できない理由だけ並べないで/で、どうするの? | 建設的でない/前に進める気がない人に見える | 問題点・原因・代案・必要な判断をセットで伝える |
| 指摘への防御反応が強い | 指摘を攻撃だと思わないで/まず受け止めて/反論から入らないで | フィードバックしにくい人に見える | まず指摘内容を理解し、事実確認してから見解を出す |
| 当事者意識が弱い | 自分ごとになってる?/誰かのせいにしてない?/外注作業者みたいになってない? | 作業範囲だけを守るだけ/成果には責任を持たない人に見える | 自分が変えられる行動と、成果物の利用場面まで考える |
なお、これは「感情を持つな」という意味ではありません。苦手な業務や相手がいることは自然なことです。ただし、その感情を品質低下や対応遅延の理由にはしない、という考え方です。
モチベーションが高い日に頑張ることは誰でもできます。プロとして必要なのは、モチベーションが高くない日でも、一定の品質で、期限までに、相手が判断できるアウトプットを出すことです。
対策:最低限守るべき品質基準・期限・チェックリストを自分で決めておくと、気分に関係なく一定水準のアウトプットを保てます。指摘を受けたときは、まず内容を要約して返し、事実確認をしたうえで自分の見解を伝えましょう。
第2章:目的・論点・スコープ設計|なぜ「それ、やる意味ある?」と聞かれるのか?
作業がクライアントの意思決定にどうつながるかが見えないと、目的のない作業だと判断されてしまうためです。
コンサルの仕事は、作業そのものではなく、クライアントの意思決定に役立つ材料を作ることです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 作業目的が意思決定に接続していない | それ、やる意味ある?/何のためにやってるの?/それ、誰が使うの? | これは何のための作業ですか?/これを見て何を判断すればよいですか? | 目的・読み手・判断内容・期待アクションを作業前に明確にする |
| 答えるべき問いが曖昧 | そもそも論点なに?/何を決めるための話?/争点はどこ? | 今日、何を決める会議でしたっけ? | 決めるべき問いを1〜3個に絞る |
| 扱う範囲が曖昧 | それ、今回のスコープ?/それ、今やる話?/どこまで扱うの? | それは今回の範囲に含まれますか? | スコープ内・スコープ外・別途検討を分ける |
| 顧客課題に接続していない | そもそも誰の何の課題?/クライアントにとって何が嬉しいの? | これは弊社のどの課題に関係しますか? | 誰が何に困っていて、解決すると何が変わるかを書く |
イシュー思考という考え方

こうした指摘の多くは、イシュー思考という考え方と関係しています。イシューとは、答えを出す価値がある問いのことです。安宅和人氏の著書『イシューからはじめよ[改訂版]』(英治出版)は、イシューを、複数の関係者の間で結論が出ておらず、かつ問題の根幹に関わる、あるいは白黒がはっきりしていない問題と定義しています(イシューからはじめよ[改訂版])。「そもそも何を解こうとしてるの?」「作業じゃなくて問いを置いて」という指摘は、この考え方に基づいたものです。
対策:作業に着手する前に、「誰が判断するのか」「何を判断するのか」「判断のために何が分かればよいか」「今回は何を扱わないのか」の4点を確認しましょう。そのうえで、答えるべき問いを1〜3個に絞ってメモしておくと、目的から逸れにくくなります。
第3章:文脈・前提・認識合わせ|なぜ「いま何の話?」「認識ずれてない?」と個別のやり取りで言われてしまうのか?
上司やクライアントはその案件だけを一日中考えているわけではなく、前提の共有なしに細部の話を始めると、相手が話に入れないためです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 相手が話に入るための文脈がない | いま何の話?/いきなり細部に入らないで/相手が思い出せる前提で話してない? | 何の件でしたっけ?/もう少し背景から説明してください | 案件名・前回経緯・今日話すことを最初に置く |
| 前提条件や確定状況が曖昧 | 前提が見えない/その前提、合ってる?/どこまで決まってる? | その前提は聞いていません/どこまで決定済みですか? | 決定済み・仮置き・未確認・相談事項を分ける |
| 相手の意図を正しく理解していない | 理解してる?/認識ずれてない?/相手が欲しいのは本当にそれ? | こちらの意図は伝わっていますか?/依頼した内容と少し違います | 自分の言葉で依頼内容を復唱し、期待成果物を確認する |
| 確認していないことを勝手に解釈している | 勝手に解釈してない?/思い込みじゃない?/本当にそう言ってた? | そのような意図ではありません/その理解で進めるとは言っていません | 事実・相手の発言・自分の解釈・仮説を分ける |
| 合意したつもりで進めている | それ、握った?/誰といつ握った?/議事録に残ってる? | それは合意した認識ではありません/いつ決まりましたか? | 誰と・いつ・何を合意したかを記録する |
「理解しているつもり」と「正しく理解している」は違います。不明点を勝手に補完せず、「こちらの理解は〇〇です」と返すことが重要です。事実・相手の発言・自分の解釈・仮説・合意をそれぞれ分けて扱うことが、これらの問題全体への対策になります。
対策:会話や依頼を受けたら、案件名・前回の経緯・今日話すことを最初に一文で共有しましょう。そのうえで「私の理解では〇〇です。合っていますか」と復唱し、合意した内容は誰が・いつ・何を、の形で記録に残しましょう。
第4章:質問・情報収集|なぜ「それ聞く意味ある?」と聞かれるのか?
質問には相手の時間を使うコストがあるため、質問の目的や回答の使い道がないまま質問すると、相手を戸惑わせてしまうためです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 質問の目的や使い道がない | それ聞く意味ある?/その質問の意図は?/それを聞いて何が変わる? | この質問の意図は何ですか?/答えると何が決まりますか? | 確認理由と、回答によって変わる判断を添える |
| 自分で調べられることまで聞いている | 自分で調べられない?/聞く前に確認した? | それは御社側で確認できませんか? | 自力で調べられることと、相手にしか分からないことを分ける |
| 相手が答えにくい聞き方をしている | 質問が雑/何を確認したいの?/どう答えてほしいの? | どのように回答すればよいですか? | 前提・確認観点・選択肢・回答形式・期限を示す |
| 仮説なしで情報を集めている | とりあえず調べるのやめよう/仮説は?/何を確かめたいの? | 調査の目的は何ですか? | 暫定的な答えを置き、検証に必要な情報だけ集める |
仮説思考という考え方
こうした指摘の多くは、仮説思考という考え方と関係しています。仮説思考とは、すべてを調べてから考えるのではなく、現時点で有力な答えを仮に置いて検証する考え方です。内田和成氏の著書『仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法』(東洋経済新報社)は、仕事の質と速さを決めるのは網羅的な分析力ではなく仮説であると説いています(仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法)。「とりあえず調べるのやめよう」「仮説は?」「何を確かめたいの?」という指摘は、この考え方に基づいたものです。
例えば、売上が落ちた原因を調べる際に「競合の新商品が原因ではないか」という仮説を先に立て、そのうえで必要なデータだけを確認する、という進め方です。仮説と思い込みは異なります。思い込みは確認せず正しいものとして扱う姿勢であり、仮説は未確認だと認識したうえで検証のために置く姿勢です。
対策:質問を送る前に「この質問で何を確認したいのか」「回答によって何が決まるのか」を一文でメモしてから送りましょう。調査を始める前には、暫定的な答え(仮説)を一つ置いてから、それを検証するために必要な情報だけを集めましょう。
第5章:構造化・視野・視座|なぜ「それ、MECEじゃない」「もっと上から見て」と言われるのか?
集めた情報の分類に重複や抜け漏れがあったり、視点が自分の作業範囲に閉じていたりすると、相手が判断しづらい整理になってしまうためです。
MECE・粒度・分類軸の乱れ
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 分類に重複や重要な抜け漏れがある | それ、MECEじゃない/被ってない?/ほかにない?/抜け漏れありそう | この項目との違いは何ですか?/ほかに検討事項はありませんか? | 分類軸を揃え、重複と重要な抜け漏れを確認する |
| 項目の粒度・階層が揃っていない | 粒度がバラバラ/同じ階層じゃない/それだけ具体的すぎない? | 比較しづらいです/同じレベルの話ですか? | 上位概念と下位概念を分け、同じ階層を並べる |
| 分類軸が不明、途中で変わる | その切り口は何?/何を軸に分けたの?/途中で軸変わってない? | この分類の基準は何ですか? | 最初に分類軸を宣言し、一つの一覧では軸を混ぜない |

こうした指摘の多くは、MECEという考え方と関係しています。MECEとは、重複なく漏れなく整理する考え方と呼ばれています。ただし、完全なMECEを作ること自体が目的ではありません。あくまで意思決定に必要な範囲で、同じ意味の項目が複数ある、重要な観点が抜けている、分類軸が途中で変わっている、といった問題を防ぐための手段です。「それ、MECEじゃない」「粒度がバラバラ」という指摘は、この考え方に基づいたものです。
例えば、システム導入の課題を「コスト」「操作が難しい」「システム」「社内教育」に分類すると、「システム」だけ抽象度が異なり、「操作が難しい」と「社内教育」が重複する可能性があります。「費用面」「機能・性能面」「運用面」「人・組織面」のように分類軸を揃えると、重複と抜け漏れを減らせます。
対策:分類を作る前に「今回はどの軸で分けるか」を最初に一言宣言し、重複や抜け漏れがないかを見直しましょう。
情報を構造で整理する
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 情報を構造化できていない | 整理されてない/情報を並べただけ/論点を切って | もう少し整理してもらえますか? | ロジックツリーやピラミッド構造で整理する |
こうした指摘の多くは、ロジックツリーという考え方と関係しています。ロジックツリーとは、問題を、何で構成されているか(What)、なぜ起きているか(Why)、どう解決するか(How)という軸で分解し、一つの階層の中に原因と対策など異なる種類の項目を混ぜないようにする整理法です。「整理されてない」「情報を並べただけ」という指摘は、この考え方に基づいたものです。
対策:問題を整理する際は、What/Why/Howのどの軸で分解しているかを意識し、原因と対策など異なる種類の項目を同じ階層に混ぜないようにしましょう。
視野を作業範囲の外へ広げる
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 目の前の作業しか見えていない | そこだけ見てない?/自分の作業範囲だけで考えてない?/後工程で困らない? | 他部署や運用への影響はありますか? | 業務・人・システム・コスト・スケジュール・運用への影響を見る |
| 担当者目線に閉じている | 作業者目線になってる/もっと上から見て/経営者にどう説明する? | 事業上のメリットは何ですか?/稟議に使える形にできますか? | 経営・責任者・利用者など複数の視座で考える |
対策:業務・人・システム・コスト・スケジュール・運用への影響まで確認し、経営・責任者・利用者など複数の視座で考える習慣をつけましょう。
抽象と具体を往復する
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 具体と抽象を行き来できない | 細かすぎる/いったん上に戻って/具体的には? | 全体方針との関係は何ですか?/具体的に何をするのですか? | 全体像・論点・具体策の位置関係を示す |
抽象化とは複数の事象から共通点や本質を取り出すこと、具体化とは抽象的な方針を行動に落とすことです。
対策:「要するに何?」と聞かれたら共通点を、「誰がいつまでにやるの?」と聞かれたら行動レベルまで、意識的に往復して答えましょう。全体像と具体策の位置関係が伝わりやすくなります。
整理が完成したら最後に、「分類軸は一つに揃っているか」「粒度は同じレベルか」「自分の作業範囲を超えた影響まで見られているか」「抽象と具体を行き来できているか」の4点を通しで見直す習慣をつけましょう。
第6章:分析・判断・提案|なぜ「結果だけ見せられても分からない」と言われるのか?
結果や概要を伝えるだけでは、相手が結論をどう受け止め、何を判断すればよいかが伝わらないためです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 結果や概要だけで判断材料が足りない | 結果だけ見せられても分からない/概要だけでは判断できない/詳細がないと検証できない | それだけでは判断が難しいです/理由や詳細を教えてください | 結論・理由・根拠・条件・比較・次アクションを揃える |
So WhatとWhy Soで示唆を示す
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 事実の意味づけがない | でっ?/だから何?/So Whatは?/示唆は? | この結果をどう受け止めればよいですか?/こちらへの影響は何ですか? | 結果・解釈・示唆・推奨アクションまで示す |
| 結論を支える根拠がない | なぜそう言えるの?/Why Soは?/根拠は? | 何を根拠にその結論になったのですか? | 結論を支える事実・データ・前提を示す |
| 根拠から結論を言いすぎている | その根拠でそこまで言える?/言い切って大丈夫? | そのデータだけで判断できますか? | 根拠から言える範囲に結論を限定する |
| 事実・解釈・仮説が混ざっている | それ、事実?推測?/どこまで確認済み? | それは確認済みですか? | 事実・解釈・仮説・提案を分ける |
こうした指摘の多くは、So WhatとWhy Soという考え方と関係しています。So Whatとは、その事実から何が言えるのかを問う視点で、事実から解釈、示唆、推奨アクションまでを示すことで、クライアントの「この結果をどう受け止めればよいですか」という疑問に答えられます。Why Soとは、その結論を裏付ける事実やデータを問う視点です。「でっ?」「だから何?」という指摘はSo Whatに、「なぜそう言えるの?」「Why Soは?」という指摘はWhy Soに基づいたものです。So WhatとWhy Soを往復することで、論理の飛躍を減らせるとされています。
対策:事実を見たら、まず「だから何が言えるか(So What)」を自分に問い、結論には必ず「なぜそう言えるのか(Why So)」の根拠を添えましょう。
相関と因果を見分ける
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 原因と相関を混同している | それ、本当に原因?/相関があるだけじゃない?/因果が逆じゃない? | 本当にそれが原因なのでしょうか? | 時間順序、第三の要因、反証事例を確認する |
こうした指摘の多くは、相関と因果を見分けるという考え方と関係しています。二つの事象が同時に起きても、一方がもう一方の原因とは限りません。原因が結果より前に起きているか、別の要因で説明できないか、原因が変わると結果も変わるか、反対の事例はないか、といった観点で確認する必要があります。
対策:原因と結果の前後関係、他の要因の可能性、反対の事例がないかを確認してから、因果関係を断定しましょう。
比較条件とリスクを揃える
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 比較条件や評価軸が揃っていない | 比較軸が違わない?/同じ土俵で比べてる?/判断基準は? | この2案は同じ条件で比較していますか? | 効果・コスト・期間・難易度・リスクなど評価軸を先に決める |
| リスクや代替案がない | リスク洗えてる?/うまくいかなかったらどうする?/その前提が崩れたら? | 懸念点や代替案はありますか? | リスク・発生条件・影響・対策・代替案をセットで出す |
| 品質確認の状況が見えない | テストした?/確認済み?/影響範囲は? | テスト内容や他への影響を教えてください | 確認観点・結果・未確認点・影響範囲を明記する |
反証を探す姿勢
- 「反証は?」「例外は?」「逆のケースは考えた?」「都合のよいデータだけ見てない?」:自分の仮説を裏付ける材料しか見ていない可能性への指摘です。
こうした指摘の多くは、クリティカルシンキングと呼ばれる姿勢と関係しています。自分の仮説を正しいと証明する材料だけでなく、それを否定する材料も探す姿勢のことです。
対策:結論を出す前に、あえて自分の仮説を否定する材料やデータがないかを探してみましょう。
ピラミッドストラクチャーという整理の仕方
- 「で、結論は?」「結論と根拠がつながってない」「話が飛んでる」「情報を並べただけになってる」:主張とその根拠が階層的に結びついていないことへの指摘です。

こうした指摘の多くは、ピラミッドストラクチャー(ピラミッド原則とも呼ばれます)という考え方と関係しています。バーバラ・ミント氏の著書『[新版]考える技術・書く技術』(ダイヤモンド社)は、副題に「問題解決力を伸ばすピラミッド原則」と掲げ、論理的な文章構成の枠組みとして知られています([新版]考える技術・書く技術)。一般に、結論を頂点に置き、その結論を支える根拠を階層的に積み上げていく考え方とされています。
例えば、「A案を採用すべきです」という結論の下に「コストが低い」「リスクが小さい」という根拠を並べ、さらにその下に具体的な数値データを置く、という積み上げ方です。
対策:報告の前に「結論」「その理由」「根拠となる事実」「比較した場合の評価軸」「想定されるリスクと代替案」の5点を紙1枚に書き出してから話すと、判断材料の抜け漏れを防げます。
第7章:伝達・資料化|なぜ「それ、伝わってない」と言われるのか?
説明したかどうかではなく、相手が理解し、判断し、動けるかどうかが重要であるため、伝えたつもりでも相手に届いていない場合があるためです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 説明したつもりで相手が理解できていない | それ、伝わってない/言ってるけど伝わってない/自分の頭の中だけでつながってる | 理解が追いついていません/話が飛んでいるように感じます | 前提・結論・理由・詳細の順番を整理する |
| 相手の次アクションが不明 | 相手はそれで動ける?/結局何をお願いしてるの? | 何をすればよいですか?/何を確認すればよいですか? | 依頼内容・期限・回答方法・判断事項を明記する |
| 表現が曖昧 | 主語がない/指示語が多い/具体的に言って | 誰が対応する話ですか?/「それ」は何を指していますか? | 主語・対象・担当・固有名詞を明確にする |
| 情報が多く本題が埋もれる | ノイズじゃない?/その情報いる?/重要なことが埋もれてる | どれが本題ですか? | 本編は判断に必要な情報に絞り、詳細は補足資料に置く |
| 資料単体でメッセージが伝わらない | このスライドで何を言いたいの?/タイトルがメッセージになってない/口頭説明なしで伝わる? | このページのポイントは何ですか? | 1スライド1メッセージにし、タイトルを主張文にする |
| 結論が後ろにあり、回答が見えない | で、結論は?/要するに?/先に答えて | 結局、Yesですか、Noですか? | 結論→理由→詳細の順で伝える |

この「結論・主要な理由・詳細・補足事項」の順で伝える型は、ピラミッド型コミュニケーションと呼ばれています。「で、結論は?」「要するに?」「先に答えて」という指摘は、この考え方に基づいたものです。結論を先に伝えることは説明を短くすることではなく、相手が最初に話の方向を理解できるようにすることが目的です。
対策:資料や報告の前に「結論は何か」「相手に何をしてほしいか」「いつまでに」の3点を1行で書き出してから作成すると、伝わらない・動けないという指摘を防ぎやすくなります。
第8章:会議・対話・合意形成|なぜ「いま何の話だっけ?」と会議で言われるのか?
会議中に論点が脱線したまま元の問いに戻れず、何を決める場だったのかが見えなくなってしまうためです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 質問に直接答えていない | 聞かれたことに答えて/まずYes・Noで答えて/そこじゃない | 質問への回答になっていません/聞きたいのはそこではありません | 直接回答→理由→補足の順で答える |
| 議論が脱線し、元の問いを見失う | これ何の話だっけ?/いま何を決める話?/論点に戻そう | 今は何の論点を話していますか? | 本題・現在の論点・別論点を切り分ける |
| 別論点を同じ場で混ぜる | それは別論点じゃない?/今やる話?/いったん置こう | それは別途議論でもよいですか? | Parking Lotに置き、後で扱う論点として記録する |
| 会議の着地が曖昧 | 今日のゴールは?/何が決まった?/誰がいつまでに何するの? | 次に何をすればよいですか?/何が宿題ですか? | 決定事項・未決事項・TODO・担当・期限を整理する |
| 明示的に合意できていない | で、握れたの?/相手の認識確認した? | その理解で進めてよいですか?/認識がずれている気がします | 会議中に合意内容を復唱し、議事録で残す |
脱線すること自体が悪いわけではありません。脱線した後に元の論点へ戻れず、何を決める会議だったか分からなくなることが問題です。
対策:会議の冒頭で「今日決めること」を1文で共有し、議論が脱線したら「その話は別途にして、いまは〇〇に戻りましょう」と一声かける役割を自分から担いましょう。会議の最後には決定事項・未決事項・やるべきこと・担当・期限を口頭で読み上げて確認しましょう。
第9章:推進・先回り・主体性|なぜ「待ちになってない?」と言われるのか?
指示を待って動くだけでは、クライアントが次に必要とする判断や資料が用意されず、案件の進行が相手任せになってしまうためです。
| 本質的な問題 | 上司・メンターのあるある発言 | クライアントから出る危険信号 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 言われてから動き、先回りできていない | 言われてから動いてない?/次に何が起きるか考えてる?/先に言っておいた方がよくない?/先回りしてる? | こちらから言わないと進まない感じですか?/それは事前に知りたかったです | 次に必要な確認・資料・判断・リスクを先に提示する |
| 相手側の準備や負荷を想像できていない | 相手が次に困ること想像してる?/相手の宿題を整理して | 弊社側で何を準備すればよいですか? | クライアント側の作業・判断・期限も整理する |
| 自分の推奨案を持たず受け身になっている | 待ちになってない?/指示待ちだよね/あなたはどうしたいの? | 御社としてはどうするのがよいですか?/進め方を提示してください | 選択肢・推奨案・理由・次の進め方を自分から出す |
| 判断をクライアントに丸投げしている | 報告じゃなくて提案して/選択肢を並べただけになってない? | おすすめはどれですか? | 比較した上で、自社の推奨と理由を示す |
| ボール管理が曖昧で進行が止まる | ボール持ったまま止めないで/誰待ち?/次いつ動くの? | 進捗はいかがでしょうか? | ボールの所在・期限・次回報告日を明確にする |
先回りとは、相手に確認せず勝手に決めることではありません。相手が次に困ることや判断に迷うことを想像し、必要な材料を先に用意することです。
対策:報告や依頼の際は、「選択肢」「自分の推奨案とその理由」「次にお願いしたいこと」「ボールが誰にあるか」の4点を必ずセットで伝える習慣をつけましょう。次回の報告日を自分から提示することも、進行を止めない有効な手段です。
コンサルの「あるある発言」を一覧で振り返るには?
本記事で紹介した代表的な34の発言と、それぞれが問うている本質、対策を一覧にまとめると、以下の表になります。
| 発言 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| モチベーションで仕事しないで | 安定した品質 | 最低品質基準・期限・チェックリストで仕事を管理する |
| 好き嫌いで仕事しないで | 感情と成果責任の分離 | 最低品質基準・期限・チェックリストで仕事を管理する |
| 文句じゃなくて代案を出して | 建設的な問題解決 | 問題点・原因・代案・必要な判断をセットで伝える |
| それ、やる意味ある? | 目的 | 目的・読み手・判断内容・期待アクションを作業前に明確にする |
| そもそも論点なに? | イシュー設定 | 決めるべき問いを1〜3個に絞る |
| いま何の話? | 文脈設定 | 案件名・前回経緯・今日話すことを最初に置く |
| 理解してる? | 相手の意図の理解 | 自分の言葉で依頼内容を復唱し、期待成果物を確認する |
| 認識ずれてない? | 認識合わせ | 自分の言葉で依頼内容を復唱し、期待成果物を確認する |
| 勝手に解釈してない? | 事実と解釈の分離 | 事実・相手の発言・自分の解釈・仮説を分ける |
| それ、握った? | 合意形成 | 誰と・いつ・何を合意したかを記録する |
| それ聞く意味ある? | 質問の目的 | 確認理由と、回答によって変わる判断を添える |
| 仮説は? | 仮説思考 | 暫定的な答えを置き、検証に必要な情報だけ集める |
| それ、MECEじゃない | 重複・抜け漏れ | 分類軸を揃え、重複と重要な抜け漏れを確認する |
| 粒度がバラバラ | 階層・抽象度 | 上位概念と下位概念を分け、同じ階層を並べる |
| その切り口は何? | 分類軸 | 最初に分類軸を宣言し、一つの一覧では軸を混ぜない |
| もっと上から見て | 視座・抽象化 | 経営・責任者・利用者など複数の視座で考える |
| でっ? | So What | 結果・解釈・示唆・推奨アクションまで示す |
| だから何? | 示唆 | 結果・解釈・示唆・推奨アクションまで示す |
| なぜそう言えるの? | Why So | 結論を支える事実・データ・前提を示す |
| 根拠は? | 論証・ファクト | 結論を支える事実・データ・前提を示す |
| それ、本当に原因? | 相関と因果 | 時間順序、第三の要因、反証事例を確認する |
| 比較軸が違わない? | 評価基準 | 効果・コスト・期間・難易度・リスクなど評価軸を先に決める |
| リスク洗えてる? | リスク管理 | リスク・発生条件・影響・対策・代替案をセットで出す |
| 結果だけ見せられても分からない | 判断材料 | 結論・理由・根拠・条件・比較・次アクションを揃える |
| それ、伝わってない | コミュニケーション | 前提・結論・理由・詳細の順番を整理する |
| ノイズじゃない? | 情報の取捨選択 | 本編は判断に必要な情報に絞り、詳細は補足資料に置く |
| このスライドで何を言いたいの? | 1スライド1メッセージ | 1スライド1メッセージにし、タイトルを主張文にする |
| 聞かれたことに答えて | QA力 | 直接回答→理由→補足の順で答える |
| これ何の話だっけ? | 論点制御 | 本題・現在の論点・別論点を切り分ける |
| 誰がいつまでに何するの? | アクション設計 | 決定事項・未決事項・TODO・担当・期限を整理する |
| 待ちになってない? | 主体性 | 選択肢・推奨案・理由・次の進め方を自分から出す |
| あなたはどうしたいの? | 推奨案 | 選択肢・推奨案・理由・次の進め方を自分から出す |
| 先回りしてる? | 予測と段取り | 次に必要な確認・資料・判断・リスクを先に提示する |
| ボール持ったまま止めないで | 推進管理 | ボールの所在・期限・次回報告日を明確にする |
まとめ:作業者からコンサルへ変わるために必要なこと

コンサルの仕事は、単に作業を正確にこなすことではありません。何を解くべきかを定め、相手と認識を揃え、必要な情報を集め、構造的に考え、根拠とリスクを揃え、相手が判断できる形で伝え、合意を取り、案件を前に進める。ここまで含めてコンサルの仕事です。
本記事で紹介した上司・メンターの厳しい一言は、クライアントから不信感を持たれる前に、社内で問題を修正するためのアラートです。社内で指摘を受けられることは、まだ軌道修正できる段階にいるということでもあります。指摘されているうちに直すことが、作業者からコンサルへ変わる第一歩です。
次の9つの観点を意識することが、明日からの実務改善につながります。
- プロフェッショナルスタンス:気分に関係なく一定品質を保つ
- 目的・論点・スコープ設計:作業を意思決定に接続する
- 文脈・前提・認識合わせ:相手と同じスタート地点に立つ
- 質問・情報収集:目的と使い道を持って情報を集める
- 構造化・視野・視座:重複・抜け漏れなく整理し、視点を広げる
- 分析・判断・提案:根拠・示唆・リスクをセットで示す
- 伝達・資料化:相手が理解し、判断し、動ける形で伝える
- 会議・対話・合意形成:論点を制御し、合意を記録する
- 推進・先回り・主体性:指示を待たず、必要な材料を先に用意する
一つずつ、明日の業務から実践してみましょう。
出典一覧
- 「イシューからはじめよ[改訂版]」 — 英治出版(2024-09-22)
- 「仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法」 — 東洋経済新報社(2006-03-31)
- 「[新版]考える技術・書く技術」 — ダイヤモンド社(1999-03)