【誰でもわかる!】LLMの歴史

[updated: 2024-08-26]
 
今回は、近年注目を集めている大規模言語モデル、LLMについて、その基礎から応用、そして未来までを一緒に探求していきましょう。

LLMって何だろう?

「LLM」って、なんだか難しそうな響きですよね。まずは、LLMが一体どんなものなのか、分かりやすく説明していきましょう。
LLMは、「Large Language Model(大規模言語モデル)」 の略称で、大量のテキストデータを学習したAIモデルのことです。イメージとしては、まるで人間のように自然な文章を理解し、生成することができるスーパー頭脳とでも言いましょうか。
例えば、私たちが普段何気なく行っている、
  • 文章の要約
  • 翻訳
  • 質疑応答
  • 文章生成
といったタスクを、LLMは驚くほど高い精度でこなすことができるんです。

LLMのインパクト:私たちの生活はどう変わる?

LLMの登場は、私たちの生活や社会に大きな変化をもたらすと期待されています。では、具体的にどのような分野で、どのように活用されるのでしょうか?
 
例として、いくつか具体的な例を挙げてみましょう。
分野活用例
カスタマーサポート顧客からの問い合わせに自動対応するチャットボット
コンテンツ制作ブログ記事やニュース記事など、様々なジャンルの文章を自動生成
翻訳高精度な自動翻訳による、言語の壁を超えたコミュニケーションの実現
教育個別学習のサポートや、生徒の理解度に合わせた教材提供など、教育現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進
医療膨大な量の医療データ分析による、病気の早期発見や新薬開発への貢献
このようにLLMは、私たちの生活の様々な場面で、利便性の向上や新たな価値の創出に貢献することが期待されています。

NLPの夜明け:初期の試みと機械学習の芽生え

LLMの歴史を語る上で欠かせないのが、「自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)」 の発展です。NLPは、人間が使う言葉をコンピュータに理解させるための技術であり、LLMはNLPの進化形と言えるでしょう。
1950年代に始まったNLPの初期の試みは、主に人間が手作業でルールを作成する**「ルールベース」**のアプローチが主流でした。
例えば、1960年代に開発された「ELIZA(イライザ)」というプログラムは、事前に設定されたルールに基づいて、人間と簡単な対話を行うことができました。これは、当時の技術としては画期的なものでしたが、複雑な文脈を理解することはできませんでした。
その後、コンピュータ自身がデータから学習する「機械学習(ML: Machine Learning)」 が登場し、NLPは大きく進歩し始めます。機械学習は、大量のデータからパターンを自動的に学習することで、より柔軟で精度の高い言語処理を可能にしました。

ニューラルネットワークの進化:LLMへの道筋

機械学習の中でも、特に注目すべきなのが「ニューラルネットワーク」です。ニューラルネットワークは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模倣したモデルであり、複雑なパターンを学習する能力に優れています。
初期のニューラルネットワークは、構造が単純で学習能力も限られていました。しかし、1980年代に「多層パーセプトロン(MLP: Multilayer Perceptron)」「バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)」などの技術が登場したことで、複雑な問題にも対応できるようになり、再び脚光を浴びることになります。
そして、21世紀に入ると、コンピュータの処理能力の向上や、学習に利用できるデータ量の爆発的な増加に伴い、「ディープラーニング(深層学習)」 が台頭します。ディープラーニングは、より深く複雑な構造を持つニューラルネットワークを使用することで、従来の機械学習では困難だった高度なタスクもこなせるようになりました。
例えば、画像認識コンテスト「ImageNet」で2012年に圧倒的な勝利を収めた「AlexNet」 は、ディープラーニングの潜在能力を世界に知らしめました。

初期のLLMの誕生:Word2Vec、GloVe、そしてseq2seqモデル

ディープラーニングの発展は、LLMの登場を準備しました。2010年代に入ると、単語の意味をベクトルで表現する「単語埋め込み(Word Embedding)」技術が大きな進歩を遂げます。
「Word2Vec」 や 「GloVe」 などの手法は、大量のテキストデータから単語の意味的な関係性を学習し、単語を意味の近いものが近くに配置されるようなベクトル空間に埋め込みます。これにより、コンピュータが単語の意味をより深く理解できるようになり、NLPの精度向上に大きく貢献しました。
さらに、2014年には、入力された文章から別の文章を出力する「seq2seq(Sequence-to-Sequence)」 モデルが登場します。seq2seqモデルは、機械翻訳や文章要約など、様々なタスクに応用され、初期のLLMと言えるでしょう。

トランスフォーマーの登場:NLPに革命を起こしたゲームチェンジャー

2017年にGoogleの研究チームによって発表された「Transformer(トランスフォーマー)」 は、NLPの世界に革命を起こした画期的なモデルです。
Transformerの最大の特徴は、「Attention(注意機構)」 という仕組みを全面的に採用している点です。Attentionは、入力された文章の中で、どの単語に注目すべきかを自動的に判断する仕組みです。
 
例えば、「私は、昨日公園で見た犬の絵を描いた。」という文章を処理する場合、
  • 「描いた」という動詞に対して、「私」が主語、「犬の絵」が目的語であることを理解する
  • 「犬」は「昨日公園で見た」犬であることを理解する
といったように、文脈に応じた単語間の関係性を把握することができます。
 
Transformerは、従来のモデルと比べて、
  • 長い文章でも文脈を正確に捉えることができる
  • 並列処理によって高速に計算できる
といった利点があり、NLPの精度を飛躍的に向上させました。

BERTとGPT:トランスフォーマーから生まれた2つの流れ

Transformerの登場により、LLMは新たなステージへと突入します。その後、Transformerをベースにした様々なモデルが開発されましたが、中でも特に注目すべきは 「BERT」 と 「GPT」 です。
 
「BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)」 は、2018年にGoogleによって開発されたモデルで、文の両方向からの文脈を考慮することで、より深い意味理解を可能にしました。
一方、「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」 は、OpenAIによって開発されたモデルで、大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、人間のような自然な文章を生成することに特化しています。
BERTとGPTは、それぞれ異なる目的のために開発されましたが、どちらもTransformerをベースにしており、NLPの分野に大きな影響を与えました。
モデル開発元特徴
BERTGoogle文の双方向の文脈を考慮することで、高い精度で文の意味を理解できる。
GPTOpenAI大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、自然な文章を生成することができる。

BERTとその進化:RoBERTa、DistilBERT、ALBERT、T5

BERTの登場は、多くの研究者に衝撃を与え、その後、様々な改良版が開発されました。ここでは、その中でも代表的なものをいくつかご紹介します。
 
  • RoBERTa(Robustly optimized BERT approach): Facebookによって開発されたモデルで、BERTの学習方法を改良することで、さらに高い性能を実現しました。
  • DistilBERT: BERTを軽量化し、処理速度を向上させたモデルです。限られた計算資源でも動作可能なため、スマートフォンや組み込み機器への応用が期待されています。
  • ALBERT(A Lite BERT): Googleによって開発されたモデルで、パラメータ数を削減することで、BERTよりも軽量かつ高速な処理を可能にしました。
  • T5(Text-to-Text Transfer Transformer): Googleによって開発されたモデルで、様々なNLPタスクを、テキストを入力してテキストを出力するという単一の形式に統一することで、高い汎用性を実現しました。
 
これらのモデルは、BERTの利点を継承しつつ、それぞれの課題を克服することで、NLPの応用範囲をさらに広げました。

GPTシリーズの進化:GPT-1からGPT-4へ

一方、GPTも進化を続け、現在ではGPT-4までバージョンアップしています。
 
  • GPT-1: 2018年に発表された最初のGPTモデルです。Transformerを用いることで、従来のモデルよりも自然な文章を生成することができました。
  • GPT-2: 2019年に発表されたモデルで、パラメータ数が大幅に増加しました。これにより、さらに自然で人間らしい文章を生成できるようになりましたが、その一方で、悪用される可能性もあるとして、開発元であるOpenAIは、完全なモデルの公開を制限しました。
  • GPT-3: 2020年に発表されたモデルで、パラメータ数が1750億個に達しました。GPT-3は、人間が書いた文章と区別がつかないほどの自然な文章を生成することができ、様々な分野で注目を集めています。
  • GPT-4: 最新のGPTモデルであり、現時点では詳細な情報は公開されていませんが、GPT-3よりもさらに高度な能力を持つと予想されています。
 
GPTシリーズの進化は、LLMの進化を象徴しており、その可能性は計り知れません。
モデル発表年パラメータ数特徴
GPT-12018-Transformerを用いた最初のGPTモデル
GPT-2201915億パラメータ数が大幅に増加し、より自然な文章を生成できるようになったが、悪用の懸念も raised
GPT-320201750億人間が書いた文章と区別がつかないほどの自然な文章を生成することができるようになり、大きな注目を集めている
GPT-4--GPT-3をさらに進化させたモデル

LLMの応用:可能性は無限大

LLMは、その高い言語処理能力から、様々な分野への応用が期待されています。
 
  • チャットボット: LLMは、自然な対話ができるチャットボットの開発に利用されています。顧客からの問い合わせ対応や、商品の案内など、様々な場面で活躍しています。
  • コンテンツ生成: LLMは、記事やブログ、小説などの文章を自動生成することができます。これまで人間が行ってきた創作活動を、LLMが支援することで、より質の高いコンテンツが生まれることが期待されています。
  • 翻訳: LLMは、高精度な翻訳を実現します。異なる言語間でのコミュニケーションを円滑にし、国際的なビジネスや文化交流を促進します。
  • 教育: LLMは、生徒一人ひとりに合わせた学習支援や、自動採点システムなどに活用されています。教育の質の向上や、教師の負担軽減に貢献することが期待されています。

LLMの未来:課題と展望

LLMは、私たちの社会に大きな変化をもたらす可能性を秘めていますが、同時に、解決すべき課題も山積しています。
 
  • 倫理的な問題: LLMは、学習データに含まれる偏見や差別を反映してしまう可能性があります。倫理的に問題のないLLMを開発し、適切に利用していくことが重要です。
  • プライバシーの保護: LLMは、膨大な量の個人情報を扱う可能性があります。プライバシーを侵害することなく、LLMを活用していくための仕組み作りが求められます。
  • 雇用への影響: LLMは、人間の仕事を奪う可能性も秘めています。LLMの導入による雇用への影響を予測し、対策を講じていく必要があります。
これらの課題を解決し、LLMの可能性を最大限に引き出すためには、社会全体で議論を重ねていくことが重要です。

株式会社Elcamyの取り組み

私たち株式会社Elcamyは、LLMをはじめとするAI技術の可能性を信じ、様々な分野における課題解決に取り組んでいます。
  • AI搭載チャットボットの開発: 顧客満足度向上と業務効率化を実現するチャットボットを開発しています。
  • AIによるコンテンツ生成: マーケティングや広報活動に最適なコンテンツを自動生成するシステムを開発しています。
  • AIを活用したデータ分析: 顧客データや市場データなどを分析し、ビジネスの成長を支援します。
LLMやAI技術にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽に株式会社Elcamyにご連絡ください。
この記事では、LLMについて、基礎から応用、そして未来までを詳しく解説してきました。LLMは、まだまだ発展途上の技術ですが、その可能性は無限大です。今後、LLMがどのように進化し、私たちの社会をどのように変えていくのか、注目していきましょう。