OpenClawが変える世界——AIが「考える」から「動く」へシフトしたとき、人間はどこへ向かうのか
[updated: 2026-02-20]
はじめに
「AIって、結局チャットで質問するだけでしょ?」——そう思っていた時代は、もう終わりかもしれません。
2026年2月、オープンソースのAIエージェント OpenClaw を開発した Peter Steinberger 氏がOpenAIに参加し、同時に OpenClawは“財団(foundation)”のもとでオープンソースとして継続されることが報じられました。これは「ツールが注目された」というより、AIが“回答する存在”から“実行する存在(エージェント)”へ移る流れを象徴する出来事として、多くの関係者が注目しています。 (Reuters)
本記事では、OpenClawとは何か、なぜこれほど注目されるのか、そして私たち人間の仕事や生活はどう変わり得るのかを、DX担当者やエンジニアの方にも分かりやすく整理します。
※本記事は公開情報に基づく一般的な考察です。実際の運用可否や安全性は、利用するモデル・連携先・設定・社内ルールにより大きく異なります。導入前に情シス/セキュリティ担当と確認してください。
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目次
はじめに目次OpenClawとは何か?
「指示待ちAI」との決定的な違い従来のAIチャットとの違いを「料理」で例えると何ができる? (代表例)なぜ今、OpenClawが
ここまで注目されるのか「AutoGPT」との違い
- 過去の熱狂を“実用”へ近づけた“買収”ではなく何が起きたのか
創設者のOpenAI参加と、OpenClawの財団化OpenClawが普及したとき、
人間の仕事はどうなるのかシナリオ1
「定型業務」はより広い範囲で自動化されるシナリオ2
エンジニアの役割が「作る」から「育てる・運用する」へシナリオ3
セキュリティリスクが“新しい形”で増える企業として今、何を考えるべきか1. エージェントAI導入の「メリット・デメリット」を正確に把握する2. 「オープンソース」であることの光と影3. 人間に残る「本質的な価値」を再定義するまとめ
”AIが動く時代”に人間はどう生きるか参考サービス紹介お問い合わせ採用
OpenClawとは何か? 「指示待ちAI」との決定的な違い
OpenClawは、オーストリアのソフトウェア開発者 Peter Steinberger 氏が、2025年11月ごろに公開したオープンソースのAIエージェントです。初期には Clawdbot / Moltbot といった名称も使われ、のちに OpenClaw として広く知られるようになりました。 (Reuters)
従来のAIチャットとの違いを「料理」で例えると
従来のAIチャット(ChatGPTやClaude単体など)は、言わば 「優秀なレシピ本」 です。「どうすれば美味しいパスタが作れますか?」と聞けば、完璧な手順を教えてくれる。しかし、実際に冷蔵庫を開けて材料を取り出し、火をつけて茹でるのは、あくまでも人間です。
OpenClawが目指すのは、いわば 「自分で動けるシェフ」。
「パスタを作っておいて」と指示すると、(設定された範囲で)予定やタスクを見て段取りを組み、必要な連絡や手続き、作業を“実行”まで進めていく——そういう“実行型AI(エージェント)”の発想です。
何ができる? (代表例)
OpenClawは、たとえば次のような“作業”を自動化の対象にできます。
※実行可否は環境・連携・権限設定に依存します
- メールの受信・返信・整理(下書き作成、ラベル付け等)
- カレンダーの予定登録・調整(候補提示、空き時間抽出等)
- Telegram / Discord / Slack 等のメッセージング連携(指示受付・結果通知)
- コード生成・テスト・PR作成などの開発補助(リポジトリ権限がある場合)
- Web検索・情報収集・レポート作成(参照先による)
- 旅行関連の手続き補助(フライト状況確認等)
ここで重要なのは、OpenClawが自己ホスト(自分のPCや自前サーバー/VPS)で動かせる点です。
ただし、「自己ホスト=必ずデータが外部に出ない」ではありません。利用するLLM(クラウドAPIかローカルモデルか)、連携先(Slack等の外部サービス)、スキルの挙動次第で、外部送信が発生し得るため、設計と設定が前提になります。 (Cisco Blogs)
なぜ今、OpenClawが ここまで注目されるのか
「AutoGPT」との違い - 過去の熱狂を“実用”へ近づけた
2023年にも「AutoGPT」のようなAIエージェントが話題になりましたが、当時は安定性・安全性・運用性の面で「面白いけど仕事には使いにくい」という声が多くありました。
OpenClawが注目される背景には、以下のような“実運用に必要な要素が揃ってきた”ことがあります(※ここは評価も含みます)。
| 比較項目 | AutoGPT(2023年) | OpenClaw(2025-2026年の潮流) |
|---|---|---|
| 実用性 | 実験色が強い | 実務導入を検討する人が増加 |
| データの扱い | クラウド前提の構成が多い | 自己ホスト構成も取りやすい |
| UI/操作 | 専用UIが中心 | 既存チャット連携など“入口”が増えた |
| 拡張性 | プラグイン/ツールは発展途上 | スキル拡張(skill marketplace等)が活発化 |
| セキュリティ | リスクが見えにくい | “問題が顕在化”し対策議論も急速に進んだ |
特に「スキル(拡張)」周りは、便利さと同時にリスクも一気に表面化しました。後述する通り、悪性スキル(malicious skills)やプロンプトインジェクションが現実の脅威になり、研究者やセキュリティ企業が具体的に警鐘を鳴らしています。 (Cisco Blogs)
“買収”ではなく何が起きたのか 創設者のOpenAI参加と、OpenClawの財団化
OpenAIのSam Altman氏は、Steinberger氏が次世代のパーソナルエージェント開発に関わる旨を示し、同時にOpenClawがオープンソースとして継続されることが報じられています。 (Reuters)
この動きは、生成AIの競争軸が「モデルが賢い」だけでなく、“仕事を完了させる(実行する)体験”へ寄ってきたことを象徴している、と捉えると理解しやすいです。
OpenClawが普及したとき、 人間の仕事はどうなるのか
シナリオ1 「定型業務」はより広い範囲で自動化される
メール要約→タスク化→通知→保存、といった一連の“段取り仕事”は、人が毎回同じ手順で回しがちな領域です。エージェント型が普及すると、こうした定型ルーティンは「人が実行する」から「人が監督する」へ寄っていきます。
つまり、仕事が消えるというより、“人が手を動かす比率”が減り、監督・例外処理・意思決定の比率が上がるイメージです。
シナリオ2 エンジニアの役割が「作る」から「育てる・運用する」へ
エージェント型は、設定・権限・スキル・ログ・例外処理など、運用設計の比重が大きい。
結果としてエンジニアの役割も、単にコードを書く以上に、次のような仕事が増えます。
- 何を自動化し、何を人がやるか(業務分解・設計)
- 権限設計(最小権限、分離、秘密情報の扱い)
- ログ・監査設計(誰が何をさせたか、なぜそうなったか)
- 失敗時のリカバリ(ロールバック、隔離、手戻り)
シナリオ3 セキュリティリスクが“新しい形”で増える
便利さの裏で、エージェントは「実行権限」を持つぶん、事故の影響範囲が大きくなります。
実際に、セキュリティ企業・研究者は、OpenClawのような個人向けエージェントを念頭に以下を問題提起しています。
- 気づかれないデータ外部送信(silent data exfiltration):スキルが裏で外部サーバへ送信する
- プロンプトインジェクション:メールやWebページ等に埋め込まれた指示で、意図しない行動を誘発する
- スキル供給網(マーケット)のリスク:便利そうな拡張が“実質マルウェア”になり得る
つまり、人間が「管理者」「設計者」「倫理的判断者」としての役割を担うことが、かつてなく重要になります。
▼セキュリティリスクに関しての詳細はこちら
企業として今、何を考えるべきか
1. エージェントAI導入の「メリット・デメリット」を正確に把握する
| 観点 | メリット | デメリット・リスク |
|---|---|---|
| 業務効率 | 定型業務の自動化・24時間稼働 | 誤動作時の影響範囲が広い |
| コスト | 長期的に工数削減の可能性 | 初期構築・保守・統制コストが発生 |
| セキュリティ | 自己ホストで統制しやすい場合がある | 設定ミス/悪性スキル/注入攻撃のリスク (Cisco Blogs) |
| 拡張性 | スキル追加で機能を柔軟に拡張 | スキルの品質管理・審査が課題 |
| 人材 | 高付加価値業務へ寄せられる | スキルシフト・運用人材が必要 |
2. 「オープンソース」であることの光と影
OpenClawがオープンソースであることは、透明性や自由度の面で大きなメリットです。
一方で、今回の動きは「創設者がOpenAIに参加」「OpenClawは財団へ」という形で整理されており、今後のガバナンス(意思決定の構造)やエコシステムの変化は、ウォッチが必要です。 (Reuters)
また、スキル供給網の安全性は“運営と運用”で大きく左右されます。OpenClaw側はClawHubに対してVirusTotalのスキャン導入を発表していますが、「スキャンがある=安全」ではなく、あくまで防御層の一つとして捉えるのが現実的です。 (openclaw.ai)
3. 人間に残る「本質的な価値」を再定義する
AIエージェントが定型業務を担うようになったとき、人間が価値を発揮しやすい領域は次の通りです。
- 判断と責任:AIが提示した選択肢に対して最終意思決定を行う
- ルール設計:AIに何をさせ、何をさせないか(境界線)を設計する
- 創造と共感:感情・文化・関係性を伴う領域で価値を出す
- 異常検知と監督:AIが正しく動いているか、逸脱していないか監視する
「AIに仕事を奪われる」という恐怖より、「AIが“動く”時代の監督者・設計者になる」という視点が重要になります。
まとめ ”AIが動く時代”に人間はどう生きるか
OpenClawの急速な普及と、創設者のOpenAI参加、そしてOpenClawの財団化は、AIの進化が「言語モデル」だけでなく、「行動するエージェント」へと移っていることを象徴します。 (Reuters)
手順の自動化・情報収集・タスク実行——これらが人間の手を離れていく一方で、「何を自動化すべきか」「どんなルールで動かすか」「リスクをどう管理するか」を考え、設計し、責任を持つ人間の役割は、むしろ大きくなるでしょう。
ただし、AIエージェントを自社環境で安全かつ安定的に運用し続けるには、セキュリティ設計・アップデート対応・スキル管理・インフラ保守など、一定の工数と専門知識が必要になることが多いです。
「とりあえず試してみた」で終わらせず、権限設計・ログ確認・更新手順といった運用ルールまで含めて継続的な体制を整えることが、真のDX実現への近道です。
※OpenClawの導入支援は行っていませんが、「自社に合う生成AI/AIエージェントの進め方を整理したい」「安全に運用できる形に落としたい」という方は、お気軽にご相談ください。
参考
- Reuters: OpenClaw founder Steinberger joins OpenAI, open-source bot becomes foundation https://www.reuters.com/business/openclaw-founder-steinberger-joins-openai-open-source-bot-becomes-foundation-2026-02-15/
- The Verge: OpenClaw founder Peter Steinberger is joining OpenAI https://www.theverge.com/ai-artificial-intelligence/879623/openclaw-founder-peter-steinberger-joins-openai
- OpenClaw公式ブログ: OpenClaw Partners with VirusTotal for Skill Security https://openclaw.ai/blog/virustotal-partnership
- Cisco Blogs: Personal AI Agents like OpenClaw Are a Security Nightmare https://blogs.cisco.com/ai/personal-ai-agents-like-openclaw-are-a-security-nightmare
- VirusTotal公式ブログ: From Automation to Infection: How OpenClaw AI Agent skills became a malware channel https://blog.virustotal.com/2026/02/from-automation-to-infection-how.html